企業の社会的責任を考慮した調達のあり方とはどのようなものでしょうか?
昨年の4月に佐川急便がアマゾンの取引から撤退したというのは、あまりに有名なニュースです。アマゾンの取引条件があまりにも厳しすぎる(要求が高く対価が低い)ことが理由と言われています。アマゾンとの取引を佐川急便が辞退したことでアマゾンの宅配業務はほとんどヤマトが一手に支えることになったようです。
こういう状況下今たいへんなことが起こりつつあります。主にBtoCの通販事業者を相手にヤマト運輸が値上げの交渉に入っているようなのです。
『低単価の顧客をリストアップして値上げ交渉を始めており、「値上げの通らない
顧客に対しては最終的に取引中止もある」』とヤマト運輸の社長のコメントが報道
されているほどです。直接の理由としては昨年起こった「クール宅急便」の不祥事問題への対策にコストがかかりそれをカバーするため、ということですが、裏側には昨年のアマゾンの問題でヤマト、佐川の競争環境からヤマトの1社勝ちの状況になりつつあることによる競争環境の欠如などが理由の一つであることは間違いないでしょう。
このような状況下で一番困っているのは通販事業者です。また今までは各ECともに送料無料や時間指定配送、当日配送などの配送関連のサービスに力を入れてきましたが、近いうちに運賃の高騰分が消費者に転嫁されることも予想されます。
このような状況は安定調達や競争環境の整備とそれによる企業努力の促進を阻害する要因にもつながります。
これらの元はある特定企業の無理な契約条件が引き起こしたことなのです。
「資本主義の世界だから自由な競争であって当然。」というご意見もあるでしょう
が、前回のメルマガでも述べましたが「安価であることには何らかの道理がある」
のです。
もしそれが供給企業の力を超える無理な安価であれば、いつかは是正する方向に向かいます。つまりいつかはどこかに歪みが生じ、その歪みを解消する力が働くのです。今回のヤマト運輸の値上げ交渉はその歪みからでてきた一つの現象と言えるでしょう。
このように考えると行き過ぎた安価購買の追及が単にその取引先だけでなく、
広く様々な企業に影響を与えつつあることが分かります。企業の社会的責任という観点からも調達活動でとても重要な視点がここにあるのではないでしょうか。
勘違いしないで欲しいのは安く買うことが悪いことだ、と言っている訳ではないということです。私が言いたいのは「無理のある安価を力で推しつけること」は企業の社会的責任という観点からも望ましいことではない。何故ならこれにより歪みは必ず生じるし、その歪みを解消する力が最終的には自社の首を絞めることにもつながる、ということなのです。
「何でもかんでも安ければいい」からそろそろ卒業しませんか。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。