LCBとオリンピックと内なる国際化

2013.12.24

経営・マネジメント

LCBとオリンピックと内なる国際化

野町 直弘
調達購買コンサルタント

LCBの活用とオリンピックと内なる国際化の推進に向けて我々はどうしていけばよいか。

今回は今年一年を締めくくるメルマガとしていつもはおこがましいのであまり書かないような政策提言を書きます。

3年前位でしょうか、坂口さんがLCBという言葉を使い始めました。LCBとは(Low Cost Buyer =ローコストバイヤー)の略でいわゆるLCC(Low Cost Country=ローコストカントリー)をもじったものです。数年前の購買ネットワーク会で今後日本企業の調達購買担当者は中国やASEANの賃金の低いバイヤーに低付加価値業務はとって代わられるということから、このLCBという用語を使いだしたと記憶しています。
最初の頃はまあそうは言っても日本企業のバイヤーの仕事がLCB活用に進むことはあまり現実的ではないと考えていましたが、ここ数年の状況を見てみますとLCB活用は従来考えていた以上に進んでいるようです。

例えば日本企業ではありませんが、外資系企業の日本での調達機能のプレゼンスが低くなり、中国ASEANが調達機能の中心になっていることは言うまでもありません。それから日本企業でも本社機能を海外に移転する、という企業まで出始めています。
一方でLCBはオフショアだけでなくオンショアでも活用され始めています。調達購買SSC(シェアードサービスセンター)の活用は(一部の企業で)採用が進みそこで働く大半の方は派遣社員、契約社員の方々です。またプロセスや品目を層別化し一部のプロセスや品目の調達購買業務をオフショアBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)化する企業も出てきています。共通して言えることは、これらのLCB活用企業は大きな業務コスト削減を実現しているということです。

一方で調達・購買部門の仕事は年々増えています。戦略的・非戦略的に係わらず、例えばCSR(コーポレートソーシャルレスポンシビリティ)調達の推進や東日本大震災やタイ洪水、紛争鉱物問題などに端を発した源流管理の徹底、サプライヤのBCP整備等々、従来のQCD(品質・コスト・納期)の確保という役割を超えた役割が期待されると共に、従来なかった業務負荷が高まっています。
また円安に振れたことで原材料市況は高騰しており、購買コスト削減が見込めなくなってきていることもあり、業務コストの削減が一層注目されています。これも先のLCB活用促進の一つの要因になってくることは間違いありません。

今年の大きなニュースの一つに「2020年東京オリンピック開催の決定」がありました。とても喜ばしいことです。日本国内の人口は今後減少傾向に向かいます。このような時代ですから国内需要の拡大のためには東京オリンピックはいいきっかけになることでしょう。最近何人かの方と話をしていて日本はバブル期に入ったとおっしゃっていた方がいらっしゃいましたがそれもあながち間違っていないのかもしれません。しかし一方でLCB活用のように国内の産業が空洞化する方向にあることも間違いありません。特に製造業の海外生産シフトは止められない方向にあります。
これは一部の大企業の製造だけでなく、中堅中小企業にも言えることですし、製造から購買調達だけでなく、開発・企画機能まで海外移転していきます。また目立った動きにはならないかもしれませんがLCB活用のような業務の一部もしくは全部をオフショア化する動きも国内空洞化に拍車をかけていくでしょう。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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