「能力がありながら、能力がひらけない」人がいる。それは能力を一段上から司る能力、すなわち「メタ能力」が発揮されていないからである。能力を高次元へ上げていくために必要なことは……
さて、ロシアとの仕事が長く続いたAさんはやがて現地の支社長となり、次第に日本とロシアの文化交流に貢献したいと思うようになった。彼はビジネスで築いた人脈と立場を活用し、いろいろなイベントを企画・推進することに汗を流した。「民間外交・文化交流こそ平和を築く礎」という信念のもとにこれまでのキャリア・人生で培った能力を惜しみなくそこに発揮した。これが能力と場を意味にひらいている状態であり、Ⅱ次元からⅢ次元へ能力を高次元化した姿である。
以上みてきたように、Ⅰ次元能力からⅢ次元能力までを簡潔にまとめるとこうなる。
【Ⅰ次元能力】
・能力をもろもろ保持し、単体的に発揮する
・「~できる」「~を知っている」ことを突き詰めていくことに満足する
・その単体的な能力を磨くことが自己目的化する
【Ⅱ次元能力】メタ能力Ⅱ
・能力を“場”にひらく能力
=場が求める目的に合わせて諸能力を寄せてきて自在に編成し、成果を出す力。
そして、その場に応じた能力が新たに身についていく。
・能力を使って成果を上げることにおもしろさを感じる
【Ⅲ次元能力】メタ能力Ⅲ
・能力と場を“意味”にひらく能力
=意味のもとに諸能力を寄せてきて自在に編成し、
場をみずからつくり出し/つくり変え、実現したい価値を生み出す力。
そして、その意味に応じた価値観が強まっていく。
・能力と場を使って意味を満たすことに喜びを感じる
◆能力の成熟化~「進化・深化」と「高次元化」
能力の成熟化には2種類ある。それは、
1)能力の「次元内での進化・深化」
2)能力の「高次元化」
である。1つめの「次元内の進化・深化」は、たとえば、職人的な世界を思い浮かべると考えやすい。百分の何ミリを指先で感じ取る金型職人、カイゼン(改善)の知恵を出させたらいくつでも掘り起こせるアイデアの達人、特許のことに関してはさまざまな情報のストックを頭に持つ法務のエキスパートなど。Ⅰ次元内の技の追求にも奥深い世界がある。
そのように「次元内の進化・深化」については、一所に集中して取り組んだり、経験量を増していったりすることで実現していく。ところが2つめの「高次元化」については、どれだけ時間をかけてその分野の仕事を真面目に繰り返していっても次元は上がっていかないことが多い。Ⅱ次元への移行は、「場」が求めるものを自覚し、場のもとに能力を司る意識にならないと駄目である。また、Ⅲ次元への移行は、意味(実現したい理念や価値、使命、志といったもの)を創造し、その意味のもとに能力と場を司る意識になることが不可欠となる。
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【働くこと原論】 強い仕事をするための肚づくり
2013.11.04
2013.09.05
2014.01.17
2014.01.08
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。