「能力がありながら、能力がひらけない」人がいる。それは能力を一段上から司る能力、すなわち「メタ能力」が発揮されていないからである。能力を高次元へ上げていくために必要なことは……
つまりⅠ次元能力は、単に「~を知っている」「~ができる」というレベルであるのに対し、Ⅱ次元能力はもろもろの能力を組み合わせ、場にかなった成果を出すレベルを言う。
◆「異動に納得がいかない」という若手社員に対して
ところで、私が受託する研修の対象は、主に20代・30代前半の会社員・公務員である。彼らがやる気をなくす原因として、不本意な異動というのが少なからずある。「本人の適正を考えないこんなミスマッチな配置転換があっていいのか」とか「会社は一貫性のない異動を強要して、これでどうして一貫性のあるキャリアが築けるのか」といった声を研修現場でもよく耳にする。そんなときに私が伝えるのは次のようなメッセージである───
・異動はサラリーマンの宿命である。
(その宿命から逃れたいなら、どうぞ思い切って独立起業なさい)
・異動はチャンスである。
(思いがけない才能を発見したり、出会いがあったり、世界が広がったり)
・優れた「組織内プロフェッショナル」とは、
次々に命じられる「場・ミッション」を楽しみにでき、
かつ、きちんと成果を出せる人財である。
3つめが言うまでもなく「メタ能力Ⅱ」を発揮せよということである。私は会社員にとって何よりも大事な能力こそ、このⅡ次元の能力ではないかと思っている。部署Xに異動となれば、そこでの業務ミッションXをくみ取り成果を出して貢献し、部署Yに配属となれば、そこでの業務ミッションをくみ取り成果を出して貢献する。どんなものにでも興味関心を抱き、過去に培った能力を自在に編成して、結果を出すことを面白がる。このメタ能力Ⅱこそ、サラリーパーソンとしてのキャリアを幸福なものにするためには欠かせない能力となる。
◆Ⅲ次元能力=能力と場を“意味”にひらく能力
だが、能力の高次元への移行はこれで終わりではない。もう一段高いところにⅢ次元能力がある。これは自分が持つ諸能力とそれが発揮される場を、意味のもとにひらいていく能力である。
ここでロシア語が話せるAさんを例にとって説明していこう。Aさんは大学時代からロシア語を専攻し、いまでもロシア語を勉強するのが好きで、ロシア人たちと会話をすることを楽しんでいる。つまりこれは、Ⅰ次元能力としての「ロシア語を話す力」を発揮している状態である。
そんなAさんは総合商社に就職し、ロシアに自動車を輸出する部署に配属になった。そうした場を与えられたAさんにとって必要になるのは、ロシア語だけでなく、貿易知識、交渉術、人脈構築力、異文化理解などさまざまな能力だ。これらもろもろの能力を養い引き寄せて、自動車販売の成果を出していく。これがいわばⅡ次元への能力高次元化である。
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【働くこと原論】 強い仕事をするための肚づくり
2013.11.04
2013.09.05
2014.01.17
2014.01.08
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。