中学生に向けた「働くって何だろう?」の授業スライドを大人の職業人であるみなさんにも紹介します。「働くことの根っこにある意識」をきちんとつくることは年齢に関係なく大事なことです。いま一度、新鮮な気持ちで仕事を分解してみてください。
確かに就職面接の際には、雇用側も働き手側も「志望動機=なぜそこで働きたいのか」なるものを問い、答えます。しかし、そこでやりとりされる動機の多くは、入社するための方便としていかにその志望先の組織に関心があるかに終始していて、必ずしも「なぜ自分は働くのか?」という根本の問いへの答えにはなっていません。実際、企業研修で、3年、5年、10年と働いてきた社員たちに、「なぜ自分は働くのか・なぜいまのこの仕事なのか」という直球の問いに、多くの受講者は明快に答えることができません。「生計を立てるためには働かねばならないから」と書くのが大半です。この答えは決して間違ってはいませんが、「人はパンのみに生きる存在か?」という問題に対し、真正面から考えるのを避けているように思えます。
とはいえ私が観察するに、「思い」が強力で堅固な人も少なからずいます。そういった人は、「思い」が先行していって、そこで必要になる能力を後付けでどんどん習得していく、また、その「思い」に共感してくれる人たちを巻き込んで事を成し遂げていく、そんな姿で自身の道を拓いています。
私が考えるたくましいキャリア形成というのは、技術や知識を雇用側に神経質にマッチングさせていくものではなく、 「思い」がぐいぐいとキャリアをドライブ(駆動)させていき、それに引きずられる格好で能力と人(同志・支援者・共感者)が付いていくものです。ですから今回、子どもたちが職業をとらえるときに重要視させたかったのが、この「思い」という観点だったのです。
2点目に、私は研修の現場で、大人になっても依然、概念化思考、抽象化思考が苦手で、ものごとの本質がとらえられない、本質に向おうとしない受講者を多くみています。具体的にマニュアル的に指示されなければ動けない働き手が増えていることはこのことと無関係ではありません。なおかつ日本人は情に流されやすい性質(たち)です。こうした2つの要素が掛け合わさると、日々起こってくる末端の出来事に感情レベルで反応するしかない、結果的に疲れる生き方になります。
結局、仕事においても、その配属された部署が好きか嫌いか、任された担当業務に対し気分が乗るか乗らないか、上司とは気が合うか合わないか、といった都度都度の感情で右往左往する状況になりがちです。モチベーション(動機)が表層の感情から起こっているので、仕事に向かう姿勢が安定しないのです。そして何か成功マニュアル・処世術の類のものに頼ろうとしてしまう。
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【中学生向け「働くって何だろう?」の授業をあなたに】
2013.07.17
2012.08.01
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。