プロダクトアウトからマーケットインへ、製品主導から顧客主導へ、企業戦略変革の重要性が叫ばれて久しい。データベースマーケティングやCRM、ワントゥワンマーケティングなど、新たなマーケティング手法が次々に登場し、実践されている。そうしたなか、顧客との新たな関係づくりとして登場したコンセプトがCEM(Customer Engagement Management)だ。そして実践のベストプラクティス企業がザッポスだ。
その中でコールセンターは重要な位置づけを占めている。同社センターの特徴を以下にあげる。
①24時間365日運用の自社コールセンター
アウトソーシングはしておらず、約500名のスタッフは正社員である。日本のオペレータの正社員比率は一部の調査によると約7%といわれており、ザッポスがいかにコールセンターを中核業務に位置付けているかが分かる
②電話での受注率は約5%。90%以上はWeb受注
Webでの受注や対応がほとんどにも関わらずコールセンターに対して莫大な投資をしており、コールセンターを効率的な業務遂行部門ではないと位置付けていることが分かる。
③オペレータにはマニュアルやスクリプトはなし。対応時間の制限もなし
顧客と企業の対応でありながら「個」としての対応を推進しており、生活者との会話をしっかりしてきずなを構築することが役割であることが分かる。
④自社が在庫切れなら他社サイトを調べて勧める。靴に関係ないことでも親切に対応するよう教育
あたかも親しい友達の相談にのるような対応で、顧客とのリレーションの構築、しいてはきずな構築をすることがオペレータのミッションとなっていることが分かる
以上のように、ザッポスではコールセンターを従来の企業の発想とはまったく違った位置づけで定義している。当然、ネット対応による効率化は最先端の仕組みで実施され、ソーシャルマーケティングにおいても先進企業としてあげられている。
ECを軸とする企業であるザッポスが、電話というアナログメディアを使って顧客と共感にすることによる“きずなを深める役割”と位置づけ、成果を出しているのだ。
ザッポスにとってコールセンターは、単なる顧客対応組織ではなく、生活者とのきずなを深めてブランド価値を向上させるための、いかなるプロモーションや宣伝活動よりも勝る、CEMを実践する重要な組織といえる。そして、コールセンターのコストは顧客サポートのためのコストセンター的要素ではなく、一般の企業でいうと、広告などのマーケティングに充当されるコストの位置づけにある。やみくもに広告に費やすコストより、コールセンターにコストをかける方が顧客とのきずなを構築し、結果的に顧客の拡大に寄与できることを体感しているのだ。
同社のような事例は珍しく、また企業ビジョンや戦略の根幹から変革が必要なため、簡単には真似できないが、「CEM時代のコールセンターのあるべき姿」が実現できている。
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