会社の「社会性」がますます重要視される時代になっている。ただし、それは一昔前の「CSR(=企業の社会的責任)」とかそういうことではなく、もっと泥臭い、人間味を帯びたものなのだ。人が幸せを感じて働けなくては、長期的に存続して繁栄する会社にはなれない。人間が「人間らしく」働ける会社とはいったいどんな会社なのだろうか。
ザッポス社CEOのトニー・シェイは、著書『Delivering Happiness (邦題『ザッポス伝説』)』の中で、人が幸せを感じるために必要な条件のひとつとして「つながり」を挙げています。よく言われることですが、人間というのは社会的動物であり、機能的そして感情的な意味での「一人で生きていく」ことは不可能です。たとえ、一生かかっても使いきれないような莫大なお金があったとしても、「私は人の役に立っている」「私は必要とされている」「喜びも悲しみも分かち合うことができる人がいる」と実感することができなければ幸せを感じることはできないでしょう。
企業は人の集合体です。企業という組織の中で、その構成員の一人ひとりが周囲の人たちと「つながっている」と実感できるかどうか、自分が周囲の人の役に立っていて、その価値が認められていると感じられるかどうかが第一の前提となりますが、その他に、企業として「社会の役に立っている」「社会とつながっている」という実質的な認識があるかどうかが、今後、企業の健康を測る上で無視することのできない指標になってくるでしょう。
だからこそ、「自社の提供する商品やサービスが社会にどんな価値をもたらすか」、言い換えれば「コア・パーパス(会社の存在意義)」を明確に定め、構成員全員がそれを共通理解することがもちろん必要なのですが、社会生態系の中に住む「会社」という生命体として、周りにどんな貢献をしているのかということが極めて重要になってくるのです。
つまり、社員の目に一番見えやすい、そして、社員が実質的に関わりやすい、実感しやすい方法として、会社が地域社会とどう関わりあい、より良い未来に向けてどう働きかけていくかが、つまり、「コア・パーパス」を明確に定義することが、企業の成長戦略の一環として欠くことのできない要素になってくると思います。
組織論
2013.01.24
2020.02.08
2020.03.10
ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。