グーグルなどシリコンバレー企業の「一流シェフのいる社員食堂」の陰にはこの会社あり!イタリア系アメリカ人CEOの食への徹底的なこだわりが、業界を変え、社会を変える・・・。
先に述べた「新鮮で季節感溢れる食材をつかって、食べる人の心と身体を健全に保つ美味しい料理を提供する」という夢を実現するためには、一流シェフを起用することがカギになるとバチオ氏は知っていました。しかし、シェフの腕前が脚光を浴び易い、華々しいレストラン業界に比べて、企業や大学のキッチンで働く法人向けフードサービス業界は地味なもの。有能な人材を確保する上で、これが厳しいハードルになりました。
なかなか首を縦に振らないシェフたちを説得するため、バチオ氏はこう約束しました。
「すべての意思決定権を君たちに託す。農場に自ら赴いて、最高の食材を仕入れて、何でも思うものを調理してほしい」。
シェフであれば誰でも、いずれは自分のレストランを持ちたいと望んでいるもの。会社としての夢と従業員の夢を一致させ、また個々人の夢を支援することにより、バチオ氏は、「愛情と信頼で結ばれている文化」を築くことに成功したのです。
3. 未来企業は「情熱」を原動力とする。
今でこそ、「サステナビリティ」を旗印にして知られているボナペティですが、初めからそうだったわけではなかったそうです。
むしろ、「美味しい食事を提供したい」という切なる願いが、「最も味覚に富んだ食材を仕入れたい」という想いにつながり、ならば、より新鮮な食材が手に入る、地元の農場から調達しようという行動につながったのです。1999年、「地産地消」などという言葉がまだファッショナブルになる以前から、ボナペティでは、シェフが自ら出向き、地元の農場を厳選して仕入れるという活動を始めました
こうして、地元の農場から仕入れるという試みが発端となって、ビジネスとして、地域コミュニティや環境保全に役立つことをするためにはどうすべきか、を考えるようになったのだといいます。そして、それはいつしか、「法人向けのフードサービス業界で、他社がお手本にできるようなサステナブルな(環境に配慮した)ビジネスのモデルを創りたい」というビジョンに変わっていきました。
設立から25年、環境や動物愛護、人権擁護など多岐にわたる分野におけるボナペティの功績は枚挙にいとまがありません。しかし、何より、私の心に残ったのは、バチオ氏の次の言葉です。
「大きくならなくてもいい。規模は小さくても、宝石のように特別な会社をつくることができれば」
現在、ボナペティはグーグル、アマゾン、スターバックス、ツイッター、ヤフーなど、全米37州の有名企業や大学、美術館にサービスを提供し、年商10億ドルに手が届かんばかりの大企業に成長しています。しかし、その発端は、売上や利益に近視眼的なフォーカスを置くのではなく、社会にインパクトを与える、大きな「夢」を一途に追求するところから始まっているのです。
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ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。