医療制度はいま、大変動期を迎えている。医師の紹介に関して圧倒的な影響力を発揮してきた大学医局が弱体化、若い医師を中心に自由な動きが活発化している。そんな状況の下で急激に業績を伸ばしているのが『民間医局』、メディカル・プリンシプル社が展開する医師限定の人材紹介業だ。その登録医師数は他社の追随を許さない、しかも優秀な医師が多く集まっている。同社のビジネスモデルと成功の秘密を中村敬彦社長に伺った。
「正面から入っていっても門前払いされることは目に見えているわけです。そもそも医局にいる先生はみんな、とても忙しい。製薬会社のMRですら、まともに口をきいてもらえないぐらい時間に追われている。そんな相手にまだ誰も聞いたことのないような『民間医局』という名称で、のこのこ行っても相手にしてくれないのは目に見えているじゃないですか」。
そこで中村社長がひねり出した起死回生の策がオリジナルメディアの無料配布だった。『民間医局』開業と同時に同社は月刊『ドクターズマガジン』の発行に踏み切る。医学界に大きな影響力を持つ人物へのインタビューあり、医学界の抱える問題を掘り下げる特集ありと極めて高い問題意識に裏打ちされたクォリティペーパーである。質を高めるためには当然、それなりのコストをかけなければならない。ビジネスはスタートしたばかり、しかも「勝算ゼロ」状況で巨額の先行投資は相当に大きな賭けとなる。
「それでも、これ以外に大学の先生にリーチする手段はないと覚悟を決めました。我々がどんなに信念をもって理想を語っても、医局にいる先生には絶対に届かない。彼らの心に響かせるためには、彼らに影響力のある人に語ってもらうしかない」。
いわゆるインフリュエンサーマーケティングである。確かに一つのセオリーではあるが、本来は資金力に恵まれた大手の打ち手だ。あえて強者の戦略に賭けたことが後の成功につながった。
およそ医局に在籍する医師なら誰もが知っているような人物を取り上げた表紙は、まずそれだけでインパクト十分である。もちろん彼らが語る内容は示唆に富んでもいる。中村社長自らが編集長もインタビュワーも勤めればこそ実現できた、こだわりの誌面である。その訴求力は並みの雑誌の比ではない。
「独立独歩、大学の医局に頼ることなく、それでも高く評価されている先生は憧れの的なのです。そうしたオピニオンリーダー達が、医局に依存するだけが人生じゃないよ。医学をきちんと学ぶ道はいくらでもあるよと語ってくれる。これは効果絶大でしょう」。
もちろん、このメディアを自主発行することにより同社は創業当初から大赤字に見舞われることになる。クォリティをキープするために編集では一切の妥協を許さなかった。従って広告掲載についても極めて厳格な基準が設けられ、それをパスする掲載依頼はほとんどゼロ。それでいて全国の大学医局に勤める医師に対して、毎月5万部を無料で発行・発送する。膨大なコスト負担である。
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FMO第2弾【メディカルプリンシプル社】
2007.12.11
2007.12.04
2007.11.28
2007.11.19