「成功者」という嘘つき野郎について
「見た目どおり儲かっていて、見た目どおり幸せな人はほとんどいない」って話をします。
どんなお金の本でも、著者の資産を正確に公開したものはありません。そりゃ、一つもないとは言っていませんよ。多くの場合は、お金を増やす指南はするけれど、けっきょく「あなたはいくらくらい」稼いでいていくら持っているのか、をはっきり語るものはありません。
隣の芝生は青い、とはよくいったもので、まわりのひとが優雅で豊かで生活に困っていないように見えます。
仕事で成功したと自分自身を喧伝するひとは、さも「お金はたくさんもっているし」「毎日たのしいし」「何の悩みもない」かのように見えます。しかし、ほんとうでしょうか。もちろん、一人や二人はいると思いますよ。ただ、それが全員ではない。
ほんとうはみんな、明日の売上がなくなるんじゃないかと不安になったり、いきなりウツ状態になってしまったり、家族に問題を抱えていたり、とさまざまです。だいたいね、ほんとうに「金があって」「幸せで」「ルンルン気分が続いている」んだったら、そんなことあらためて喧伝する必要がないわけです。そうでしょう。
ぼくが見た方々は、心のなかではビクビク怯えていたり、あるいは翌年の社会保険料の支払いに疲労していたり、裏切られたりしていました。見た目は成功者であっても、です。
ぼくは毎日、地味な生活をしています。こんなこといっても何のトクもしません。本をガンガンに出して、講演して、そのカネで毎晩のように高級レストランで食事しています、なんて言ったほうがウケるかもしれない。でも、ぼくは服は決まった店で最低限しか買わず、食事も味がわからないので高級店には行かず、お金をかけるといったら本代くらいです。海外旅行にいってもホテルにずっと「ひきこもる」のが好きです。
それよりも、毎日を地道に歩むほうが性に合っています。そして、毎日ウジウジ悩んだり、いろんなことに悩んでしまう自分を、そのままで認めてあげようと思います。ポジティブシンキングなんて、もう要らない。どうせ変わらない自分なんだから、そのまま肯定するだけです。
等身大の姿で生きることに、なんらためらいがありません。逆にいえば、必要以上に自分の姿(華麗・大金・豪華・成功)を声高に叫ぶひとは、なんらかの意図があると考えたほうが良いでしょう。
え、夢がないですか? そうかもしれません。でもぼくはリアリストですから、それでいいのです。「みっともなく生きる」を実践しようと思います。
そして、夢がないからこそ、冷静に行動できる事実をお伝えできればと思います。
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2009.10.27
2008.09.26
未来調達研究所株式会社 取締役
大阪大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務に従事。未来調達研究所株式会社取締役。コスト削減のコンサルタント。『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎新書)など著書22作。