エンドユーザー・ファーストの大切さ

2007.11.27

経営・マネジメント

エンドユーザー・ファーストの大切さ

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

船場吉兆のように、店に来られたお客様までをだますのは論外だとして。 BtoBで産業材を扱うメーカーはエンドユーザーからの距離が遠くなりが ちだ。そこでこそ大切なのが『エンドユーザー・ファースト』、いつも最 終ユーザーのことを考える想像力である。

たとえば自動車のパーツメーカーA社があったとしよう。この会社の直接
の顧客は1次から3次ぐらいまでの部品メーカーのどこかになる。仮にパ
ーツの納入先が2次メーカーだったとしたら、A社が作っているパーツは
およそ次のような経路をたどることになる。

A社>>>>>2次メーカー>>>>>1次メーカー>>>>>
アセンブラー(完成車メーカー)>>>>>(ディーラー)
>>>>>エンドユーザー

A社からすればエンドユーザーは遥か彼方の存在である。しかもそのパー
ツがエンドユーザーの目に触れることさえ恐らくはないだろう。さらにA
社のパーツは走行系に関わるものではなく、万が一品質にちょっとした瑕
疵があったとしてもエンドユーザーに致命的なダメージを与えることはま
ず考えにくいとしよう。

一方で完成車メーカーからのコストダウン要求は熾烈さを極めるばかり。
要求コストに合わせることができなければ、契約打ち切りをちらつかせら
れたりする。今や余程の特殊技術をもつ企業でもない限りは、技術的にも
品質面でも中国企業の追い上げにさらされているのだ。そこで経営陣が
(あるいは経営陣から過酷なコストダウンを強いられている現場の責任者
が)悪魔の囁きに耳を傾けてしまう。

あながち、あり得ない話ではない。

現に法律で定められた性能をクリアしていない製品を、堂々と偽って出荷
し続けていた建材メーカーだってあるのだ。このメーカーの場合は大胆に
も国が行なう性能試験で巧妙な偽装工作を行なっていた。ことはさらに悪
質である。最悪のケースでは人の生死に関わる問題を引き起こしていた可
能性さえ否定できない。

このメーカーの社長がいみじくも会見で語ったとされるのが次の言葉であ
る。「納入先の客様しか見えず、その先の消費者への思いが不十分だっ
た」。

いま建設業界を揺るがしている改正建築基準法が施行されたのも、元をた
どれば構造計算に携わる設計士がエンドユーザーのことをまったく考えて
いなかったことに端を発する。設計士は何より発注先の機嫌を損ねないこ
としか考えることができす、検査機関もまた然りといった構造の中で耐震
偽装問題は起こった。

ここで産業材や生産材メーカーが心すべきは、エンドユーザーのためにな
らないことは、いつかは回り回って自社のダイレクトユーザーにも禍根を
残す、ということだろう。そしてエンドユーザーに何らかの『不』をもた
らしてしまえば、そのツケは最終的に必ず自社にも回ってくる。

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