「奇跡の動物園」と言えば、 「旭山動物園」(北海道旭川市) ですね。 では、「奇跡の美術館」と言えば・・・?
それは、
「金沢21世紀美術館」(石川県金沢市)
です。
同美術館は、円形の建物。
そこで“丸い美術館”の意味を取って、通称
「まるびぃ」
と呼ばれています。
さて、「まるびぃ」は、2004年10月オープン。
初年度の年間入場者数は157万人、
2年目は120万人でした。
たかだか人口46万人の地方都市に過ぎない金沢の美術館が、
これだけの来場者数を集めるのは驚きです。
というのも、全国の美術館の
平均年間来場者数はせいぜい5-6万人。
開館日一日当たりで200人たらず。
ところが、まるびぃには、
土日は7-8千人、平日でも4-5千人
が来場します。
「まるびぃ」の奇跡を主導した特任館長、
蓑豊(みのゆたか)氏は、この美術館を任される前は、
「大阪市立美術館」の館長を務めていました。
大阪は人口300万人、
京都、神戸を含めると周辺人口は500万人になりますが、
大阪私立美術館の年間来場者数は
100万人
を超えたことがないそうです。
ちなみに、金沢の最大の観光名所といえる、
日本三大名園のひとつ、兼六園の年間入場者数は
160万人程度です。
なるほど、「まるびぃ」が、旭山動物園と並んで
「奇跡」
と称されるのは納得ですね。
では、なぜこのような奇跡が起きたのでしょうか?
もちろん、単に運が良かったわけではなく、
蓑館長はじめ、関係者の努力の賜物ですが。
成功要因のひとつは、
「まるびぃ」が金沢市中心部にあること。
他の地方都市に多い、郊外にある美術館よりも、
人々が気軽に立ち寄りやすいという立地上のメリットが
ありました。
さらに、円形の建物はガラス張りで開放的。
従来の美術館の薄暗いイメージを覆す明るい雰囲気が
あります。しかも、出入り口が5カ所もあるので、
入りやすい敷居の低い美術館なのです。
しかし、こうした環境要因以上に、
成功の決め手となったのは、モントリオール美術館、
インディアナポリス美術館、シカゴ美術館など、
北米の名だたる美術館の東洋部長を経験された蓑氏が、
「美術館も人が来てナンボ!」
という「経営・マーケティング発想」で、
「まるびぃ」を積極的にプロモートした点にあります。
おおむね日本の美術館は、館長にしろ、学芸員にしろ、
客が入ろうが入るまいが、自分たちには関係ない、
高尚な芸術を理解できない大衆が悪い、という
開き直りの運営
が一般的。
蓑氏のように、
美術館を経営する、マーケティングする
という発想はまったくないのです。
日本の美術館のほとんどが、
うまくいっていないのは当然ですよね。
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2009.05.15
2009.07.03
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。