サムスンはアップルにディスプレイ納入を止めてしまうのか。またシャープとアップルの関係はどうなる。そこには巨大な思惑が見え隠れする。
サムスンディスプレイのアップル供給問題を考えると、その背後のメーカーの思惑も予想できる。近いうちにサムスンがアップルへの液晶供給メーカーであることを止めるとしたら、そのビジネスを獲得する者が次の勝者となる。そう考えたのが鴻海(フォンファイ)だっただろう。鴻海はフォクスコンを有する台湾企業グループだ。フォクスコンではiPhoneの組立を請け負っているものの、その請負価格は一台あたりたったの数ドルといわれる。台数が多いために売上はあがるものの、薄利多売。きっと、郭台銘氏(鴻海CEO)は苦虫を噛み潰していただろう。iPhoneに付加価値の高い部品類を供給することはできないか……。
そこで出てきたのがサムスンディスプレイとアップルの不協和音だった。そこで、すぐさま郭台銘氏は経営不振が伝えられていたシャープとの資本提携に走ったに違いない。シャープを援助することで同社の液晶技術力を傘下におさめていくことで、形勢逆転をはかることができるのだ。
サムスンは自社技術でディスプレイを有しているのにたいし、アップルはよく知られている通り自社工場すらない。アップルにしてもサムスンなきあとのディスプレイ供給に不安を感じていたことも考えられる。とするならば、シャープと鴻海の連携は、サムスン対アップル、いや、Google対アップルの大きな構図のなかの一片を担っている。
・iPhone5とシャープ液晶
ところで、現在iPhone5の生産遅れについて、シャープの液晶の供給遅れが問題だったと報じられている。複数の関係者やニュースによると、液晶の歩留まりが悪化しており、想定の数量を生産できなかったためだという。
この液晶の供給遅れで、周辺の部品メーカーは影響を受けたといわれる。当たり前だが、液晶がなければiPhone5の生産ができないので、他の部品メーカーは準備をしていたものの、供給することができなかったのだ。
iPhone5を利用している立場からすれば、たしかに液晶はすぐれており、一部で批判された「黄色がかった」画面色だけれど、私は気にならない。数世代前の機種と比べると、その進化に驚くほどだ。
ところで、とはいえ日本の技術力は、その製品機能の高さだけではなく、すぐれた生産力にもあったはずだ。もし、シャープの歩留まりが悪化し、供給数量が確保できなければ、他のディスプレイメーカーに変更することもできたはずだ。完全に切り替えるわけではなくても、そのシェアの一部を他社に担ってもらうこともできたはずだ。実際に、iPhone5のディスプレイはシャープ1社ではなく、シャープを筆頭として、複数社調達といわれている。
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2012.12.04
2012.12.23
未来調達研究所株式会社 取締役
大阪大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務に従事。未来調達研究所株式会社取締役。コスト削減のコンサルタント。『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎新書)など著書22作。