『民間医局』はなぜ、医師紹介で日本一なのか? 第一回

2007.11.19

経営・マネジメント

『民間医局』はなぜ、医師紹介で日本一なのか? 第一回

INSIGHT NOW! 編集部
インサイトナウ株式会社

医療制度はいま、大変動期を迎えている。医師の紹介に関して圧倒的な影響力を発揮してきた大学医局が弱体化、若い医師を中心に自由な動きが活発化している。そんな状況の下で急激に業績を伸ばしているのが『民間医局』、メディカル・プリンシプル社が展開する医師限定の人材紹介業だ。その登録医師数は他社の追随を許さない、しかも優秀な医師が多く集まっている。同社のビジネスモデルと成功の秘密を中村敬彦社長に伺った。

■大学ではなく民間だからできること

中村社長は金融畑出身である。医療の世界を傍から見ていて、矛盾がありそうなことには早くから気付いていた。だから第二のステージとして医療を選んだ。「とはいえ準備を始めた頃は何も知らなかった。日本の医療費がGDP対比でみれば、先進国の中では一番低いグループなんて聞かされても冗談でしょうって感覚ですね。医師不足問題もまだまったく表面化していなかったですし」。

ただし将来の医療界を大きく左右しかねないマクロな動きだけは、的確にキャッチしていた。2004年に導入された新卒後臨床研修医制度である。この制度により医師は、医局が指定する特定の診療科ではなく、さまざまな診療科を研修先として『自由に』自分の意志で選択できるようになる。ということは大学医局の力の源だった人事権が医局から奪われる。医学界のパワーバランスが崩れれば大混乱に陥る可能性が極めて高いと考えられた。

一度、自由を手に入れた新卒医師がどうするか。少しでも自分の望む条件に近い病院を探すことは自明の理である。そこにチャンスが生まれる。また大学の医局が地方病院に研修医を派遣していた従来のシステムは間違いなく崩壊する。研修医を思うままに動かすことができず医師不足に陥る医局が、各地の病院に派遣していた医師を呼び戻す悪循環さえ起こるだろう。病院サイドでも医師探しが喫緊の課題となる。

「こうした大きな制度改革に対応した事業展開は一朝一夕に行なわれるものではありません。何年も前から地道に準備を進めた上で実施される。当然、起業時には、2004年からこの制度が実施されることはわかっていました」。

マーケティングの鉄則の一つ「マクロ分析」を的確に押さえていたのは金融畑での長いキャリアの賜物だ。さらに起業のタイミングを中村社長は「今しかないラストチャンス」と捉えてもいた。なぜなら大学の医局が崩壊してしまってからでは『民間医局』の存在が際立ってこないからだ。旧弊をもたらす制度「大学医局」が確固としてあればこそ、そのアンチテーゼとしての『民間医局』が成立する。

「当初は、大学医局と全面的に対決しようなんて大それたことを考えていたわけではありません。大学医局が医学の発展に大きな貢献をしてきたことは間違いない事実であり、今後もそれは変わらない。ただ大学がやるべきことと、民間がやるべきことを分けましょうよ、というのが我々のスタンスなんです」。

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