津波に対して感じるリスク(知覚リスク)が、東北地方太平洋沖地震以降、逆に低下している可能性があります。
震災後、マスコミ報道では、
「大船渡の津波23m」
「津波37.9m 国内最大級 宮古・田老地区」
といった表現が繰り返し流されました。
いかに「高い津波」が東北を襲ったかが強調されたのです。
こうした報道を目にした人々にとっては、
3m未満の津波
はそれほど大したことがないように感じられるようになってしまった。
つまり、23mに対して3mという高さは、アンカリング効果によって過少な数字に見えてしまっているのではないかと考えられるのです。
現実には、50cmの津波でも人々は立っていることができませんし、木造家屋は、2mの津波で多くが全壊してしまうほどの脅威があるのですが。
大木氏は、この調査結果が示すように、情報の提示のされ方によって、人々のリスク感度が鈍くなる可能性を踏まえて、
「1mで木造家屋は半壊、2mでは全壊」
といった平時には伝えられている基本知識を
災害発生時の報道や防災無線の呼びかけ
においても、付け加えるべきこと。
また、「10mを越える大津波」といった表現をする際には、
「1mでも危険である」
という注意を補足することを提言しています。
アンカリングは、私たちの
無意識の直感的判断
に影響するだけに、単に
「心がける」「気をつける」
だけでは制御することが難しいもの。
適切な情報提供の工夫が必要なのです。
*津波の調査については、
『リスクの社会心理学』
のコラムを引用しました。
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2012.10.03
2017.10.03
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。