「デモグラフィック・セグメンテーション」(年齢や性別に基づくターゲット顧客の切りわけ)は、扱い方を間違えると、お客様の神経を逆なでしてしまうことがあります。
以前、50代の女性エッセイストが、日経新聞のコラムで嘆いていたことを覚えています。
彼女は、ある女性向け通販をよく利用していて、そのカタログが届くのを楽しみにしていた。ところが、50数歳の誕生日を過ぎたある日、届いたカタログを見てみると
・腰回りがゆったりとした・・・
・ストレッチタイプで楽に着られる・・・
といったコピーが踊る商品が並んでいたのです。
要するに、シニア女性向けのカタログに勝手に切り替えられてしまったということでした。彼女はそのカタログを見ながら思わずため息。
自分が「老い」に近づいていることを無理やり認識させられ、ちょっと気分が落ち込んだのでした。
果たして、彼女がその通販カタログでなんらかの商品を購入したのかどうかまでは書いてありませんでした。おそらく、残念な気持ちにさせられたカタログを利用する気にはならなかったのではないかと思います。
さてつい先日、知人がフェイスブックのタイムラインで嘆いていました。
彼は57歳の誕生日を迎えたばかりですが、ドコモからDMが届いたとのこと。
『ドコモから、特別なあなたに。ご優待特典を、お届けします』
と書かれた封筒を開封してみると、
機種変更クーポン付き「らくらくスマートフォン」
の案内でした。
彼の言葉を借りると、
「とたんに意気消沈」
という気分に。
そして
「くそーiPhoneにしてやる!」
とも。
私も40代後半になってつくづく思いますが、みんな何歳になっても、
「自分は若い」(年齢よりは)
と思っています。
私のダンスつながりの知人女性(50代後半)は、
「気分はいつも25歳」
と公言しながら(笑)、軽やかに遊んでいます。
また、ある調査によると、
「老けたね・・・」
と人に言われるのがもっとも不快なことです。
シニア向け商品だからと、
「シニアなんとか」
というネーミングにしたら、全く売れないのも常識。
現在の日本では平均寿命も延び、いわゆる「シニア層」と呼ばれる人々は、以前よりも肉体的・精神的にもはるかに若々しく、活動的です。
そもそも、年齢や性別に関わらず、価値観やライフスタイル、趣味嗜好は実に多様化しています。同世代だから同じような考え方や生活をしているとは必ずしも言えない。
ですから、単純に年齢や性別といった
デモグラフィック(人口統計的)なデータ
だけに基づいてセグメンテーションを行うのはなるべく避けるべきです。
冒頭のエッセイストに送られた通販カタログ、また、知人に送られたドコモのDMは、明らかに、「年齢」だけでセグメントしているとしか考えられません。
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有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。