ホームゲームの勝率が高い本当の理由とは?

画像: Kristin Tieche

2012.08.15

営業・マーケティング

ホームゲームの勝率が高い本当の理由とは?

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

多くの競技スポーツにおいて、地元で行なわれるホームゲームの勝率は、敵地で行なわれるアウェイゲームよりも高い。 これは明確に数字として示すことのできる事実ですが、地元開催だと、ホームチームが勝つことが多くなるのはなぜでしょうか?

逆に、ホームチームが1点負けている時の追加タイムは平均で約「4分」と、ホームチームが勝っている時の2倍の長さになるのです。

素直に考えると、ホームチームが勝っている時は、速やかにゲームを終わらせたい。逆に、負けている時は、できるだけゲームを長引かせ、ホームチームに得点のチャンスを与えたいという意図が主審にあるとしか思えないですね。

しかも、1点差の接線でない場合、つまり2点以上の差でどちらかが勝っている場合、追加タイムは、常にほぼ一定した長さで違いがないのだそうです。

これは、追加タイムで2点以上の差を埋めるのはさすがに難しいと、主審が判断しているからだろうと推測できます。

さて、審判の方々の名誉のために解説しますが、実のところ、審判は、明確に意図して「地元びいき」の判定・裁量をやっているわけではありません。審判の方々はできるだけ公明正大にプレーを見極め、正確な判定をしようと心がけているのです。

それでも、結果として「地元びいき」になってしまう理由は、モスコウィッツ教授らの分析によれば、

「集団への同調圧力」

の影響だと考えられています。

ホームゲームでは、地元ファンの目が多い。みな、ホームチームが勝って欲しいと願っている。彼らは始めから「地元びいき」です。微妙なプレーは常に、ホームチームに有利な判定になることを望んでいるわけです!

そうした雰囲気を感じている審判は、‘無意識’に、ホームチームに対して有利な判定をしてしまいがちになるのです。つまり、ホームゲームの観衆の「総意」とでも言えるものに、審判も無意識に同調してしまうというわけ。

逆に、総意に反する判定はとてもやりにくい。ストレスを感じてしまう。実際、ホームチームに不利な判定をした審判は、地元ファンから大きなブーイングを受けることも少なくないわけですから。

なお、ホームチームの勝率に審判の判定が影響を与える大きさは、審判の主観による判定部分が多いサッカーやバスケットボールなどで大きく、主観的な判定部分が相対的に少ない野球などでは小さくなります。

この分析も、審判が「集団への同調圧力」を受けて、主観的な判断にはバイアスがかかりやすいことを裏付けるものと言えますね。

オリンピックでも昔から

「主催国効果」(主催国選手が活躍することが多い)

があると言われてきています。

今回のロンドンオリンピックでも、英国のメダル獲得数が大きく伸びました。

果たして、オリンピックの審判員にも、なんらかの心理的バイアスが生じたのかどうか、分析してみると面白そうです。(オリンピック審判員の方々のスキルや公明正大さに疑問を呈する意図はないことをご理解ください!)

*参考文献

『オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く』
(トビアス・J・モスコウィッツ、L・ジョン・ワーサイム著、
 望月衛訳、ダイヤモンド社)

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有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

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