私はトップバイヤーの4つの素養は「徹底力」「情報力」「コミュニケーション力」「頼られ力」だと考えています。
最後の「頼られ力」ですが、これは耳慣れない言葉ですね。
30代前半で私は会社の中で新事業企画の仕事をしていました。それまでは原価企画や購買の仕事をしていました。購買という仕事は所謂企業活動をしていく上でなくてはならない仕事でした。ですから自分が思うと思わざると仕事が生まれてくる業務でした。それに対して企画部門というのは自分が何かをやらないと何も生まれないという仕事です。当初はそのGAPにかなり苦労したことを思い出します。その企画部門の仕事をやっていた当時、同じ職場に2つ下の後輩がいたのですが、彼には社内外の情報がどんどん集まるし、社内のお偉い方がよく話をしにくる、企画の能力も高いがそれを実現する能力が非常に高い優秀な人間でした。私は「何で彼には情報が集まるのだろう、何で彼のところにはいつも誰かが相談に来ているのだろう」それが不思議でしょうがありませんでした。しかし彼の仕事のやり方を見ていてハッとしました。彼は誰かに何かを頼まれた時に徹底的に時間をかけて期待以上のことを必ずやって返しているのです。どんなに自分の仕事が忙しくても。。例えば誰かが一言、「こういうこと知っているか?」と聞かれると、自分が知らないことでも、かなり時間をかけてA3一枚のレポートにまとめて、聞かれた方にプレゼンする。このように、依頼した方の期待以上の対応を必ずしていたのです。そこには仕事上の壁など全くもうけていませんでした。これが彼の所謂「頼られ力」です。私は社会人になって一番最初に覚えたのは「自分の仕事の範囲を如何に減らしリスクを低くしていくか」でした。それが間違っていたことを私はその後輩から教えられたのです。以降私はいかに周りから「頼られ力」を高めていくか、心がけています。なぜなら「頼られ力」を高めること、イコール最終的には自分のためになること、と考えているからです。
これからのバイヤーは自ら進んで自分の殻を破り「頼られ力」を身につけていくべきです。「頼られ力」があるバイヤーには自然と情報があつまり、実行力や徹底力が自然とついていくからです。
ここで取り上げた4つの素養「徹底力」「情報力」「コミュニケーション力」「頼られ力」ですが、よく考えるとバイヤーだけに必要な力ではなく、実はビジネスパーソンとして欠かせない共通の素養であることが分かります。それぞれがビジネスで成功するための今日の条件ではないでしょうか?
逆に言えることは、これからのバイヤーがバイヤー業務を通じて納得できる素養はビジネスパーソンとして欠かせない素養をほぼ網羅しているということです。つまりバイヤーがその業務経験から得た力は将来どんな畑のどんな仕事にも通用するということなのです。一方でこれらの4つの素養は意識しなければ習得できるものではありません。日々の業務を何となくこなすだけでなく、4つの素養を意識しながら身につけていくことが必須なのです。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。