ビジネスマナーとは、敬いの気持ちと気働きを、他者に伝えるためのノウハウである。
新入社員の入社から、もうすぐ3ヶ月が経過する。毎年この時期になると、人事からも新入社員からも「研修で学んだビジネスマナーが、なかなか実践できない。」という声が出てくる。名刺、電話、言葉遣い、席次、身だしなみ、その他の接遇に関することを学んだけれども、現実の場面では戸惑うことや、どうすべきか分らないことが少なからず出てくるようだ。こうなる原因は、二つ考えられる。
一つは、言動が「他者への敬意」に基づいていないこと。新人について言えば、親や先生や先輩に厳しくしつけられた経験がなく、友達のような関係を続けてきている人は、敬いの気持ちを形に表す術というものを知らない。ビジネスマナーとは、どうすればリスペクトが伝わるかというノウハウである。
だから、他者に対するリスペクトが染み付いた人には、マナー研修で学ぶ一つ一つがいとも簡単に理解できるし、学ばなかった場面が現実に起こっても応用がきく。ところが、それがない人には、マナーを慣習やルールとしか理解できないから、想定外のことが起こるとどうしたらいいか分らなくなる。
忘れてならないのは、会社や組織に相互にリスペクトする雰囲気がない場合も、同じようになることである。例えば、成績の上がらない年配社員や、上手に組織運営ができないベテラン管理職をバカにするような組織風土があると、それが新入社員にもすぐに伝染し、ビジネスマナーというリスペクトを伝えるノウハウをないがしろにするようになる。年配やベテランの過去の貢献を敬う、要領の悪い仕事仲間にもその強みに焦点を当てるようにする、うるさい顧客に対してもその取引に感謝する、そういうことが出来ない組織では、新人にビジネスマナーを教えても無駄である。
二つ目は、「気働き」がないこと。新人について言えば、多様な人達と触れ合った経験がなく、気の合う仲間達だけで過ごしてきた人は、目にする状況、耳にする言葉からあれこれと想像する力が弱いため、先回りした行動がとれない。ビジネスマナーとは、どうすれば気働きが伝わるかというノウハウである。
だから、他者に対する気働きが習慣化されている人には、マナー研修でやる内容はごく自然な振る舞いだと感じられる。現実に起こったことにも、考えて対応することができる。ところが、気働きができない新人にとっては全く逆で、気の利いた行動を“余計なことではないか”“出過ぎたマネではないか”“もし違ったら逆効果ではないか”と恐れてしまう。
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NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。