アマゾンに悩まされる瀕死の米店舗小売業は「根本」を見直せ

2012.05.11

経営・マネジメント

アマゾンに悩まされる瀕死の米店舗小売業は「根本」を見直せ

石塚 しのぶ
ダイナ・サーチ、インク 代表

店舗がネット・ショップの「ショールーム」と化すという現象に悩まされる米店舗小売業。突破口をスマホ・アプリの開発等に見出そうという動きもあるが、果たしてそこに解決策はあるのか?

ターゲットは、ワンランク上の商品を低価格で提供し、スタイリッシュで楽しい暮らし設計を支援する、というコンセプトで90年代から2000年代のはじめにかけて一世を風靡した企業だ。しかし、近年その店は死んでいる。店員に笑顔はなく、みな退屈そうに仕事をこなしている。レジの列は最短時間で顧客を処理するアッセンブリー・ラインにすぎない。そこには、「楽しいショッピング体験」、「また来たいという感動」、「愛着、あたたかみ」は微塵もない。

顧客が自社店舗の名前を口に出したり、思い浮かべたりする時、どんな感情を抱くか。そこには、微笑みや親しみや、仲間意識があるだろうか。それとも、不快感がこみ上げたり、心が冷たくなったりするだろうか。顧客は「人」であり、人を動かすのは「感情」であることを、店舗小売業の人たちは見つめなおさなくてはならない。低価格戦略、商品戦略、IT戦略など、これまでの小売業はそういった周辺のことばかりにこだわり、根本を忘れてきたように思う。いかに優れたアプリをつくったところで始まらない。むしろ、人に最も大きなインパクトを与えうるのは「人」である。ならば、テクノロジー投資よりも、人への投資が優先と考えるべきだろう。従業員が笑顔で働ける職場をつくれるか、お金儲けや、競合を蹴落とすこと以外に会社の存在意義があるか、もしあるとすれば、それを本社のお偉いさんばかりではなく、店舗のフロアで働く人までもが実感しながら働ける環境をつくれるか。突き詰めれば、顧客に愛され、社会が応援したくなる企業文化を築くということなのだが、そこに、ターゲットに限らずすべての店舗小売業の生き残りの道があると確信している。

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石塚 しのぶ

ダイナ・サーチ、インク 代表

ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。

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