2012年1月30日厚生労働省が初めてパワーハラスメントの定義を公表しました。上司から部下へのいじめ・嫌がらせと言われていたパワーハラスメントは、なにもそうれだけでなく部下から上司もあり、同僚から同僚へもあるとのこと。さて、パワハラ防止とは弱者保護のためのものなのでしょうか?
弱者・強者ではなく、人としての違いはあります。その違いを受け入れ、理解し、それを活かしていこうとする視点があれば、ハラスメントなんて起きないでしょう。国籍、民族、性別、年齢、生まれた場所、学歴、生きてきた環境、すべてが違いとなるわけですが、そういった異文化の相手といかにコミュニケーションを上手くとっていくかが問われる時代です。
かつての古き良き時代のように、「あうん」の呼吸でわかってもらおうなんて無理な話だし、相手がだまって自分に従うなんて神様でない限りありえないことです。部下の態度がよくないと思えば、どんな状況におけるどんな言動がよくないのか、それがいかに会社にとって本人にとって損をすることになるのか切々と説明することが必要です。部下の立場でお酒に誘われて行きたくないのであれば、なぜなのかを相手の気持ちを考えながらちゃんと断ることが必要です。言いたいことがあるのにそれを言わずに黙っていると、逆に表情などの非言語の部分にそれを表れてしまいます。上司はそれを見逃さない。すると、逆にパワハラを受けやすい状況をつくってしまうのです。
ある大手企業の社長でらっしゃった男性にパワハラやセクハラについてどう思うかお聞きしてみました。すると、
「部下がそれを外部に訴えた時点で自分の社内における成長をストップすることになるんだとわかっているのかな?」
とのこと。これもパワハラ防止が弱者保護と感じているための言葉なのかもしれないと感じました。
どちらにしても、外部に相談する前にちゃんと自分自身を相手に伝えることは、上司であれ、部下であれ、取引先であれ、夫婦間であれ、重要なことです。と同時に、相手が言いたいことをキャッチし理解することも重要です。
そのために、言語情報である言葉をしっかり使いこなすとともに、言葉以外の情報である非言語情報と言われる表現を使いこなすことが問われる時代なのです。謝罪会見の「申し訳ございません」という同じ言語情報でも、どんな表情で、どんな声で、どんな動作で発したのかによって、聞いている方の受け取り方が変わります。謝罪の気持ちがあるかないかを相手は非言語情報から感じ取るのです。
さらに、どんな服装を着ていたか、ちゃんと身だしなみの整った髪型だったかまでを人々は観て、多くの情報を受け取っているのです。
セクハラ、パワハラのタブー用語は何かなどと聞かれますが、実はセクハラもパワハラも、「何を言ったか」ではなく、「誰が言ったか」「どう言ったか」という非言語情報による影響の方が大きいことをここで声を大にして言っておきたいと思います。
あいつも言ってるんだから自分もいいだろうと思った時点で大きな間違い! 気がつけばパワハラ上司として訴えられ、会社を辞めることになってしまった! そんなこともあり得る時代です。
パワハラ防止を考えることは弱者保護ではなく、自分は強者と思いこんでいる古き良き時代を引きずっている「似非強者」の是正、一方で部下を思う愛すべき熱血上司の保護として必要なのかもしれないと感じる今日この頃でございます。
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2016.10.18
2018.03.16
株式会社パーソナルデザイン 代表取締役
「自分らしさをデザインする。」をコンセプトに、独自のパーソナルアイデンティティ分析を基に業界・業種・役職に合った「自分らしさ」をスタイリスト、ヘアデザイナー、ボイストレーナー、演出家ほか各種スペシャリストとともに演出をサポートしています。ビジネスパーソンのためのパーソナルプロデューサー、が肩書きです。