ある購買課長の挑戦(後篇)

2011.10.03

経営・マネジメント

ある購買課長の挑戦(後篇)

野町 直弘
調達購買コンサルタント

前回プロジェクトXのすごいところを3つあげました。 一つ目は「大きな効果」でした。 二つ目は「継続的で徹底的で愚直な現場改善」ということ。それも購買部門が主導していることでした。 三つ目が「双方向の取組みとそれを上手く動かす三方よしの方法論」です。

「購買部門にとってのお客様は取引先なのに、何故当社の購買部員はお客様に対して横柄な態度をとっているのだろう。購買部門は社内では発言力もなく、社内のプロジェクトには殆どメンバーとして参画していない。
また大多数は何かを変えることに消極的である。
この部門をどうにかしなければならない」と。
坂本常務は当時若手の新任課長であった藤元の人間性や才能を認め、藤元をプロジェクトXの推進責任者に抜擢したのでした。
坂本常務の目は確かであり、その後藤元を中心に進めたプロジェクトXがここまでの活動になったのでした。

以前藤元課長と私が飲んでいた時に彼から聞いた言葉があります。

「私は昔、購買の仕事が嫌で嫌でしょうがなかったんです。何故かって・・・どんなにいい仕事をしても会社からは認められない、収益の殆どを稼いでいるにも関わらず脚光を浴びるのは営業や技術部門だったからです。
またそういう経緯から自分も知らず知らずの間に他の多くの人と同じように毎日を何もなく過ごせて、トラブルに巻き込まれないことが一番だと思っていました。同じ給料なら、なるべく楽にトラブルなく、というようにね。
でも私はこのプロジェクトで生まれ変わったんです。このプロジェクトは自分にとっても大きなチャレンジだったんです。
私はこのプロジェクトを通じて多くのことを学び、多くのことを得ました。
一番の宝は多くの諸先輩、取引先の方、外部の方とのつながりです。
このような宝を得られたのは、プロジェクトXを苦労しながら進めてきたからなんです。昔はよく思っていました。
何かチャレンジするにしても自信がない、と。
しかしこのプロジェクトを進めて来て、本当に試し試し進めてきたんですけど、今は自信を持って後輩に対しても言えます。何かにチャレンジしなさい、と。」

私はこの言葉を聞いて思いました。プロジェクトXの一番の成果は「一人の購買課長の成長であり、そこから生まれた新しい多くの若手人材の成長だと。」

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注釈:この物語はあくまでもフィクションであり、過去もしくは現在において
似たような企業もしくは登場人物がいたとしてもそれは全くの偶然です。

前篇:http://www.insightnow.jp/article/6820
中編:http://www.insightnow.jp/article/6821

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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