夏休みの宿題といえば読書感想文。さっそく良い子の夏休みにふさわしい本をいくつか買ってみました。元検事で現在服役中の田中森一、元山口組の後藤忠政、陸山会事件で係争中の石川知裕被告。そこから得られた教訓は「組織人とは」「リーダーとは」という問題提起です。
良い子の感想文、最後は
「悪党」石川知裕。
小沢一郎元秘書で、陸山会事件の刑事被告人として係争中の現無所属衆議院選挙である筆者は、20年にわたり小沢一郎の側用人として仕えてきました。検察のデッチ上げ証拠が全部不採用になるなど、恣意的な捜査と起訴によりほんろうされる心情がバラバラと綴られています。やや読みにくい感じがするのは、それだけ本書が今正に小沢・陸山会事件というきわめて政治的な事件の真っ只中に置かれ、推敲等も十二分に出来なかったリアリティを感じさせます。
やはり印象深いのはご本人より小沢一郎自身のこと。20年に渡り日本の政界でこれだけ影響を及ぼした政治家は他に存在せず、またその功利主義的思考は「和をもって尊し」という日本人の感覚、特に既得権をガッチリ握っている政界、官界、マスコミ界すべてを敵に回す姿勢であることが、自民党最強幹事長時代以後、細川内閣・新生党~新進党、自由党、民主党という時の流れと、カウンターパートとなり全員が消え去っていったライバル(結局瞬間的ライバルに過ぎない小物ばかり)をも包容する視点が興味を引きます。
民主党だけでなく、政界最強の選挙マシーンと呼ばれる「小沢秘書軍団」の選挙支援は、正に営業戦略の基本。「足で稼ぐ」ことの尊さはもちろん、それも単に根性論ではなく、緻密な戦略論に基づく「足」の尊さが語られているのは本書の特質でしょう。
組織論としてのドブ板選挙、川上作戦という角栄譲りの選挙戦略に比べ、松下政経塾くずれの学級会政治・風頼み・大衆迎合路線と全く軌を異にする泥臭さが、やはり小沢の魅力なのだと感じます。
またリーダー論として、2世議員でありながら、誰も小沢を2世議員と呼ばない、扱わないように、リーダーは自ら勝ち取るもの。禅譲ではなく戦いによって勝ち取ってきた自民党以来のリーダー交代(田中派→経世会→改革フォーラム・・・)に納得します。
マスコミのレッテル張りを鵜呑みにする今の人たちは、小沢がバリバリの新自由主義の旗手だったころのことを知らずに媚中派というレッテルを信じているのでしょうが、そうした世間の見方と小沢本人の視点の違いを解説する「小沢一郎解説書」として、非常におもしろく読めました。
ちなみに小沢の功績理解であれば平野貞夫氏の一連の著作の方がずっと明確に書かれています。
巻末の今年5月31日に収録された小沢との師弟対談だけでも買う価値アリ、だと思いました。
あれ?著者が全部犯罪者と刑事被告人ばかりになっちゃった。まあいいや。
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上司学入門
2013.09.11
2012.04.04
2011.08.27
2010.10.22
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。