「ネット・オークション」のパイオニアであり、ネット通販初期のアメリカで一世を風靡しながら、近年アマゾンに押され気味のイーベイ。「SO・LO・MO(ソロモ)」をキーワードに巻き返しを図る・・・!
ファッションというのは、着る当人が「良い」と思うだけでは不十分で、やはり他人の目から見て、「似合っている」と評価されることが重要なものなのだ。だから、他人の意見を聞きながら買い物をすることが必要であり、また楽しみでもある。
ファッション・ショッピングのこういった特性を理解し、イーベイでは、「ソーシャルな買い物」を可能にする機能を次々と取り入れている。例えば、フェイスブックのウォールに自分が良いと思った商品を載せ、友人の意見を聞いたり、投票を募ったりできる機能。これは、フェイスブックにモバイルでアクセスし、友人や家族と四六時中「いつもつながっている」生活を送るユーザー層(ソーシャル・カスタマー)が主流化しつつあるからこそ効を奏すサービスだ。近リアルタイムで意見を交換し、まるでショッピング・モールを一緒にブラウズするように、商品の見せ合いっこをし、購買意思を下すことができる。
こういう機能がもう少し普及すると、「彼氏」や「夫」という立場にある男性たちがショッピングのお供として街に駆り出されることは少なくなるのではないかと思うのだが・・・。女性たちが街に繰り出し、ウキウキとお喋りや試着を楽しんでいる間に、男の人たちは家でゴロゴロしたり、ホームセンターで自分の趣味の買い物に勤しんだりすることができるのでは。
そんなことを思い巡らしてみたけれども、女性にしてみれば、試着室の外に男性を待たせておいて、ひとつの服を身につけるたびに、「これ、どう?」と聞いてみること自体に、「ソーシャル」な愉しみがあるのだろう。つまり、どんなに「ソーシャル・ショッピング」や「スマートフォン」のテクノロジーが発達しても、試着室の外で手持ち無沙汰に連れを待つ男の人たちの姿はなくならないということになる。
イーベイが実践するLO(ローカル)
「ネット」オークションとして地位を確立したイーベイとしては、かつては、「ネット上での売買をファシリテートする」ことに意義があった。しかし、昨今では、最終的に売買が起こるのはどこかに関わらず、ネットとリアルの橋渡しをすることに新たな意義を生み出している。
昨年12月、イーベイは、ローカル店舗の在庫情報のウェブ検索を可能にするサイト、Milo.comを買収したが、現在、イーベイ・サイトへの同機能の統合を着々と進めている。Eベイで商品検索すると、イーベイ内で売られている商品と並んで、最寄の店舗の在庫および価格情報が表示される(勿論、在庫情報が提供されるのはこのプログラムに加盟している店舗に限られたことだが)。
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2011.10.07
2011.12.23
ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。