玩具のバンダイが化粧品?しかも、キャラクターが「のだめ」?…。いくつも疑問符が頭に浮かんでしまう記事が日経MJ10月26日のファッション&リビング欄に掲載された。しかし、そこには同社の戦略と願いが込められているように思われる。
競合環境が激しい、目元ぱっちり少女漫画キャラクター化粧品。展開されているのはセルフ販売のドラッグストアやコンビニで目にとまり、手に取らせるインパクトが重要なため、見た目も似てきてしまっている。そこで、バンダイは今回、ターゲットをずらすことを狙ったのだと思われる。
化粧品購入価格は低価格傾向を強めている。大手化粧品メーカも1000円未満の「3桁コスメ」への参入が相次いでいる。そこで、少女漫画ばりに目元をキメるアイメークにこだわる年齢層の少し上を狙って、「峰不二子」を投入したのではないか。
それ以上に期待していると思われるのが、今回の「のだめ」だ。あえて、「ベルサイユのばら」という作品名や、「峰不二子」というキャラクター名をにしなかったのは、「のだめカンタービレ」がそれらほどメジャーでなかったり、「のだめ」のキャラクターのインパクトが弱かったりということではないだろう。もっと、作品やキャラクターへの思い入れや同一化以上に、「お悩み解消」という消費者に課題解決を訴えたかったのだろう。
確かに作品中で主人公の、のだめこと、野田恵が化粧をしてひどい仕上がりになるシーンがある。しかし、そのいわれを知らなくとも、化粧に自信のない層や、まだ慣れていない若年層などはターゲットになり得る。
リリース記事によると、<クレアボーテのホームページでは、動画でメイク方法をご覧いただけます>(現在は準備中)とあり、至れり尽くせりの構えを見せている。うまくターゲットを顧客化し、ファン化できれば、さらなるラインナップを拡充してクロスセリングを図ることも大いに期待できる、なぜなら、「ベルばら」や競合商品のターゲットは、もともとメークに関心があり、より効果的に(しかも安価に)仕上げたいと願う人々だ。「のだめ」のターゲットは自信がなかったり、慣れていなかったりする人であるため、囲い込みがしやすいといえるだろう。
そもそも、バンダイが化粧品に参入する狙い。そして、さらにターゲットを拡大して取り込もうとする狙いは、同社のホールディングカンパニーであるバンダイナムコホールディングスの連結決算から見えてくる。全面的な減収減益で、営業利益は-90%を超えている。玩具もゲーム・アミューズメントも苦戦している。今後も少子化は加速し、本業への影響は免れない。キャラクターやコンテンツを活用するというシナジーを活かし、新たな顧客と接点を作り、新たな領域のビジネスを展開することが欠かせないのである。
バンダイの化粧品事業「クレアボーテ」はまだ、本体の中にある。このブランドが成長して、分社するぐらいの成功を見せるのか、今回の「のだめ」の化粧品だけでなく、今後にも注目してみたい。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。