ノーガードの殴り合いのような、果てしない値下げ合戦。…といっても、巷を賑わせている「牛丼戦争」の話ではない。「DVDレンタル市場」の話だ。
日経新聞10月21日企業2面コラム「市場分析」の記事。タイトルなどに「DVDレンタル市場縮小加速 CCC・ゲオ 価格競争過熱 映像配信普及も逆風に」などの文字がちりばめられている。業界シェア4割で首位のTSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は、シェア2割で2位のゲオによる価格競争の影響で貸出枚数は増加するものの、減収減益の「利益なき繁忙」に陥っているようだ。発端は昨夏、ゲオショップが全店で旧作のレンタル料金を従来の半額、100円にするという値下げをしかけたことだ。CCCもゲオとの競合店が多い20道県で追随した。記事には「相手が値上げするまでやめない」とまでいう恐ろしい両社のコメントが掲載されている。
両者の昨年度決算報告(2010年3月)を見ると、CCCはグループ事業のうち、TSUTAYA事業を除いて全セグメントで増益を確保しているが、本業が重く足を引っ張っている。対するゲオは得意のローコストオペレーションが奏功してか、ゲオショップの属するメディア事業も増益は確保したが、売上高は減少し、今期も回復していない。
DVDレンタル業界はどこへ行くのか。今年9月には米国最大のチェーン、ブロック・バスターが経営破綻した。各メディアでの第一報は、「映画などのインターネット配信に代替された」と原因を伝えたが、上記の日経の記事は宅配レンタルと無人貸出機の影響を示唆し、米国での店舗での貸出率は4割に低下としている。日本の状況も対比的に記事中に散見できる。09年の国内DVDレンタル市場は対前年比15%減であり、人口減とネットの無料配信(YouTubeやニコニコ動画などか?)などに流れたことが背景としている。しかし、日本では好立地や生活スタイルの違いから依然店舗が9割であるという。
成長戦略を考える「アンゾフのマトリックス」で考えれば、既存顧客を深掘りする「市場浸透」の施策の一つをTSUTAYAが行っていることを、10月22日の日経MJ3面「着眼着想」のコーナーで伝えている。「DVDレンタル“発掘良品” 映画通100人、名作を掘り起こす」とタイトルにある。1970~80年代の映画作品を中心に、廃盤などで姿を消した名作を、社内外の映画通が掘り起こして貸し出すサービスを始め、独自性を打ち出す取り組みをしている。それが奏功し、「発掘良品」とされた作品は新作並みの貸出稼働率を上げるほか、従来以上にない中高年のリピート促進に貢献しているという。単価アップが望めない以上、在庫回転率を高めて収益を上げることが求められる。既存顧客にいかに新たな価値を提供して、利用頻度を高めてもらうか。「発掘良品」はその一つの解である。しかし、さらなる深掘りのために知恵を絞ることが必要だ。
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2009.02.10
2015.01.26
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。