前回は、カーボンフットプリントを巡る国際規格制定の動きをお伝えした。しかし、価値を生まない測定・監査の力を頼らずとも、環境経営は進んでいる。今回は、こうした取引先を巻き込んだ、サプライチェーンでの環境経営の取組をご紹介する。
「測れないものはマネジメントできない」とよく言われるが、結果が出るまでに5年以上など非常に時間の掛かるもの、さまざまな要素が絡むもの、創造性、倫理観など定性的なものなど、経営上、測れないものは山ほどある。これらの測れないものも含めて、目標、目的達成に導くのが真のマネジメントだ。
環境経営、環境負荷低減に関わるものは、まだまだ買い手の価値観の中での優先順位が低く、結果が出るまでに時間が掛かる。また、原料・素材、部品、製品メーカ、物流会社、ユーザ、廃棄・リサイクル会社といったサプライチェーンのあらゆるプレーヤーが絡んでおり、誰がどこまでの責任を負っているのかあいまいだ。経済性、省資源、省エネルギー、環境汚染など必ずしも両立しない複数の要素を考慮しなければならない。環境経営、環境負荷低減は、正に測りにくいものの典型。
こうした際の意思決定においては、細かいデータを集めてから行おうとすると、いつまでもデータが揃わず何も行動が起こされず成果が出ない、ずるずると衰退してしまう、無駄な労力を使いすぎ意思決定の前に力尽きてしまうということが多々ある。それよりも、コスト、リスク、経済的、定性的メリットをざっくりと評価して行動した方が上手くいく。積極的に何もしないことでリスクを回避するケースを除けば、行動を起こさず何かを得ることは決してない。
ウォルマートやH&MのCbDへの参加を決めた意思決定者も決して細かいコストベネフィットアナリシスを実施してはいないだろう。特にそうした数字の記載がない。いかんせん、この手の話は成果の測定が難しい。単純に、地球環境への負荷の低減への信念、ブランド価値の向上、省資源、省エネルギーによる経済効果をざっと勘案して、それでこれ位のコストだったら、「頭を使うまでもない」という即決の意思決定だったのではないか。
測れないものをマネジメントするには、それを無理に測定しようとして非効率や混乱をいたずらに招くのではなく、人々の理想、理念、意欲などを上手く使って測らずに成果を上げるよう図った方が効率的、効果的である。こういうのは日本人は得意だったはずだ。そのノウハウを上手く環境経営、環境負荷低減の分野に適用し大きな成果を上げ、その成果、手法を広く海外に伝えていくことで、環境経営の分野で世界をリードしていこうではないか。
中ノ森 清訓/株式会社 戦略調達 代表取締役社長
調達・購買業務に関わる代行・アウトソーシング、システム導入、コンサルティングを通じて、お客様の「最善の調達・購買」を実現することにより、調達・購買コスト、物流費用、経費削減を支援する傍ら、調達・購買活動から環境経営に貢献する方法は数多くあると、環境負荷を低減する商品・サービスの開発やそれを支える優良なサプライヤの紹介など環境調達に関する情報発信活動を行っている。
コーポレートサイト: http://www.samuraisourcing.com/
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます