各メディアによると、吉野家は4日、9月7日に発売した「牛鍋丼」の販売数が1千万食を超えたと発表した。一方で、すき家・松屋との牛丼低価格戦争離脱のための、もう一つの戦略商品「牛キムチクッパ」を約1ヶ月発売延期し、11月目処としたという。その理由と影響は何だろうか。
「準備に万全を期す」というその意味が、筆者の感じたボリューム感の問題を先行販売店で試食した来店客の様子から感じ取った結果であったとしたら、これからのチャレンジはかなり大変なものになるだろう。大規模チェーン店のメニューは厳密な原価計算のもと、設計されている。「それでは少々量を増やそうか」とはできない。
しかし、明るい材料もある。何といっても、計画を上回る「1千万食越え」を達成しているのだ。原価低減を規模の経済によって図れる可能性もある。また、他の報道では、連結子会社のステーキの「どん」なども原材料低減とコスト圧縮で黒字化を達成したという。特に、同じく牛肉を扱う「どん」が好調になり客数が伸び、吉野家と原材料の共通購入を図れる部分が多くなれば、それだけ仕入れ原価低減が図れる。ゼンショーもステーキを扱う「ココス」などの連結子会社と共同で牛一頭買いをして原価低減を図っている。吉野家も「ショートプレート部位」だけにこだわらないメニューを開発した以上、調達部分の見直しが可能となり、安くてボリュームのある牛肉を使えるようになるかもしれない。
広報の発表では、牛キムチクッパの発売が正式に何日になるかは明かされていない。拙速より巧遅を尊び、万全の準備で美味しくてたっぷり食べられる、低価格牛丼に十分対抗できる第2の戦略商品としての発売を待ちたいと思う。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。