街角にあるダイドードリンコの自動販売機に入っている、ウルトラマンや怪獣、仮面ライダーを模した缶飲料を見たことがある人は多いだろう。「ウルトラコーラ」「ウルトラ大怪獣レモネード」「仮面ライダーサイダー」という商品だ。そして、今度は「侍」を発売するという。
しかし、自販機の保有台数が多く、その依存度が高いことは昨今では大きな弱みともなっている。全国250万台の飲料自販機はもはや飽和しているといわれ、良好な立地の新規設置は難しい。さらに、飲料が大量に購入される建設現場に設置される自販機も、不況で現場が減少し縮小を余儀なくされている。同様に、ホワイトカラーの職場でも人員削減、オフィス縮小が進んで自販機が撤去されるような事態が起きている。
そうした自販機逆風の環境下でも、販路を簡単に変更することはできない。なぜなら、販路=Placeはマーケティングの4P(Product・Price・Place・Promotion)の中で、最も社外の利害関係者が関与する要素であるため、調整が難しく、変更するには時間がかかるのだ。「自販機の調子が悪いから、そちらのチェーンで扱ってください」とはとてもではないが、簡単にいかないのだ。そこで、同社は立地の条件に合わせて自販機をスクラップ&ビルドしたり、様々な機能を持たせた新型自販機へのリプレースを進めたりしている。
自販機のコストはどうやって捻出するのか。そこも同社がユニークな点である。同社は飲料メーカーであるにも関わらず、生産設備を持っていない。OEM(相手先ブランド)方式で製品を供給する株式会社ニッセーなどに委託しているのだ。固定費を重くしない経営ポリシーである。さらに、自販機9割の売上げは、コンビニなどに比べればチャネルマージンを抑えることもでき、さらに商品代金は消費者がその場で支払うため、日銭で入ってくる。極めてキャッシュフローに優れているのである。そうしたファイナンス的なメリットを実現するためにも、ダイドードリンコは、何より「自動販売機で売れる」魅力的な商品を開発し続ける必要があるのだ。
一消費者として、何気なく目に留まる面白い商品。しかし、その背後には企業としての様々な戦略や制約条件の中で勝ち残るための工夫が隠されているのである。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。