INAXとTOTOのCM対決から見えてくるもの

2010.09.07

営業・マーケティング

INAXとTOTOのCM対決から見えてくるもの

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 ふと、テレビを見ているとINAXとTOTOが印象的なCMを放映していた。両社の狙いはどこにあるのか?

 一方のTOTOは、既存市場に新たな製品を提供する「新商品開発」で、この縮小する日本市場での生き残りをかけている。
 <TOTO新商品CM公開中!>
 http://www.toto.co.jp/News/fair2010summer/cm.htm

 注目は、女優・小林聡美、俳優・光石研が、双子の兄弟の子供と出演するキッチン(CRASSO)と浴室(sazana)のCMだ。両商品のCMは出演者の双子の兄弟が共通なだけでなく、歌のメロディーと体操のコンセプトが共通である。特にCMソングの旋律は強烈で、一度聞いたら耳を離れない。ちなみに、メロディーは全て半音上げ、ピアノの黒鍵だけで弾く音程になっている。ビミョーな音程、不思議なダンス。そして、真面目だけどどこか無表情で訴えかけるような小林聡美と光石研、双子の演技。いわゆるAIDMAのAttention(興味)とInterest(関心)を強制的に持っていくようなCMなのだ。
 もちろん、CMはMemory(記憶)に残すことはできても、それだけでDesire(欲求)を高めることも、Action(購買行動)まで持っていくこともできない。しかし、新築やリフォームに関心がない人に響かなくとも、関心層にリーチして製品特性をアピールすることができれば成功なのだ。トイレの便器に比べ、キッチンや浴室はまだ、機能訴求が十分可能な商品だからだ。その機能性で、限られた日本の住宅件数というパイの奪い合いに生き残りをかけているのである。

 黙っていても商品が売れたのはもう40年以上前の話だ。それどころか、商品の成熟化で20~30年前のマーケティングのテーマであった「差別化」さえ、困難になってきている。さらには市場自体が縮小を始めているのが今日の日本の姿なのである。座していては死を待つばかり。モノ作りもCM作りも、市場と顧客の姿をつぶさに見て、何を訴えかけるのかを明確にすることが真に欠かせない。
 

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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