創業2年足らずで年商5億ドルに達すると予測される超・急成長ビジネス、グルーポン。その魅力の秘密と、今後の独自性維持の決め手について考えてみた。
最近、アメリカでは、どのビジネス誌やブログを見ても、グルーポンという会社の話題で持ちきりだ。グルーポンという社名は、「グループ」と「クーポン」を複合したもので、クーポン共同購入という比較的新しい業態のパイオニア的存在である。「期間限定」のプロモーションをウェブで配信し、その期間内に一定数の購買希望者が名乗りを上げれば、「ディール(取引)」が成立する。たいていのものはディスカウント率50%程度だが、なかには75%引きなど文字通り「破格」のものもある。
2008年創業のグルーポンは、今年、年商5億ドルに達し、一年以内に10億ドルを突破すると予測されている。「史上最速(?)」の成長のスピードは前代未聞の快挙だ。アメリカで一世を風靡した歴代の有名企業を見てみたが、かのアマゾン、グーグルでも10億ドルに達するのに5年を費やし、アップルが8年、デルが9年を費やしている。ウェブの威力で購買力を集束するスケール、スピードともに飛躍的に向上し、それが企業の成長のスピードにも貢献していると思うが、3年で10億ドルとは、かつての常識では考えられなかったことだ。
また、もうひとつ成長の指標として見落とすことのできない「利益」といった面でも、グルーポンはなんと、創業後7カ月にして黒字に転換した。比較として挙げると、2005年に創業したユーチューブなどは、未だに赤字から脱却できていない。
「グループ購買」という仕組みはネット初期から存在したが、当初、その多くは、ウェブの「地理的障壁のなさ」に着目したものだった。それをあえて、「ローカル」に的を絞りこみ、「中小のビジネス」のサポート役として位置付けたところが、グルーポンの特異性である。
そして、グルーポンのもうひとつの特徴として、「おトクな話は人から人へ伝わる」という昔ながらの原理を応用したという点がある。「〇人集まればディール成立!」の触れ込みに触発されて、フェイスブックやツイッターなどを通じて友人・知人の協力を募るから、短期間で、より多くの人にメッセージが伝播される。
生活者にしてみれば、グルーポンは、タウン情報サイトのようでもある。日々のプロモーション情報を通じて、「へえ~、こんなお店があったんだ」と、自分の街の「知る人ぞ知る」ビジネスを発見できる。これが、グルーポンを介してプロモーションを提供する売り手(お店)にとって大きなメリットでもある。今も昔も、スモール・ビジネスにとってはマーケティングが悩みの種だ。オーナーが仕入れ、接客、経理をひとりでこなしているようなビジネスの場合、マーケティングにあてるお金も時間も人もないことが多い。そんなビジネスにとっては、新しいお客さんに、その存在を「見つけてもらう」、そしてあわよくば、そのサービスを「試してもらう」という点で、グルーポンが強い味方になりえる。
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2011.03.18
2011.10.07
ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。