企業の資金調達や企業審査に関わってきた経験を基に「売れない会社」とはどんな会社か?また、どうしたら企業価値が高まるのかをご紹介します。
売れない企業、あるいは、魅力のない企業とは次のような企業です。
1. 顧客や社会のニーズに適合しなくなっている企業
どんなに輝かしい企業の歴史があっても顧客や社会のニーズに適合しなくなってきている企業の将来は明るくなりません。何よりも、それに気付いていなかったり、新事業を展開するなど適切な対応ができていない場合は企業価値が売上金額以下、あるいは、資産価値以下ということも多くなります。破綻した夕張市のように、炭鉱から観光産業への展開を図っても、適切な差別化やそれを運営するための経営力がなければ投資した資本を回収することはできなくなります。時間とともに資産が劣化する分、資産の価値は割り引かれます。また、一定の固定顧客をつかむなど資産価値以上の価値を生み出せなければ、ほとんど新品でも半額以下になるような「割引」を受けることになります。
2. 資産価値以上の価値を持たない企業
企業は理論的には貸借対照表(BS)の価値と同じだけの価値を持つことになります。それでも、株式公開企業の中にも資産価値を下回る企業が多くあります。実際の資産価値が帳簿上の資産価値に満たない場合、帳簿外の債務や損失を抱えている場合、あるいは、それらの可能性があると考えられる場合、企業の価値は貸借対照表の価値を下回ることになります。1で指摘したような企業も将来の資産価値が現在の資産価値を下回ると見込まれるため、企業価値は資産価値を下回ることになるはずです。
3. 人的付加価値が低い、あるいは、ほとんどない企業
人的付加価値が低い、あるいは、ほとんどない企業には魅力がありません。人的付加価値が認めらない企業とは、現在の仕事をやめて、特別大きな費用がかからないのであれば、別の仕事を始めても良いことになります。その方が、より多くの売上や利益を上げられるのであれば、会社として、また、社会的にも良いことになります。企業は、社員を抱えています。社員が持つ知識、ノウハウ、技術、顧客、あるいは、それらの蓄積として生まれる信用や信頼には価値があります。これらのソフト資産の価値が人的付加価値です。ブランド価値も人的付加価値の一種だと言えます。これのような人的付加価値はM&Aでもしない限りは貸借対照表などの財務諸表に表れません。企業の価値は、人的付加価値の分、貸借対照表上の価値よりも高くなるはずです。
いくらかでも帳簿上の資産価値があるのであれば、その価値以下であれば、会社を売ることができるはずです。それでも、資産を評価するための費用や簿外の債務や損失を引き継ぐ可能性を考慮すると、資産を個別に売買する方が良いことになります。あるいは、会社全体を引き受けるのではなく、特定の事業における顧客や社員の人的付加価値を反映した営業権が取引されることになります。
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