部課長が客観性に留まって指示・命令・評価しているだけでは部下は動かない。部下は上司とのやりとりで、「正論」より「熱のある話」を聞きたがっている。「評価」より「自分の存在意義」を求めている。「データ」より「意味・やりがい」に耳を傾ける。
◆コミュニケーションの基本要素「3つのC」
部課長が部下に対して行うコミュニケーションを単純な形で言い表すと、次のようなものになります。
部課長は、
①状況文脈をつかみ、その文脈に乗せて
②語るべき内容を持ち、
③もろもろの振舞いを通して、
部下に対し意志疎通を図る。
ここに出てきた3つの要素=「文脈」(Context)、「語るべき内容」(Contents)、「振舞い」(Conduct)は、どれを欠いてもコミュニケーションが成り立たない大事な基本要素といえます。英語表記の頭文字を取って「3つのC」と呼ぶことにします(図1)。
コミュニケーションは双方向ですから、実際は図2のように、部課長には部課長の3つのCがあり、部下には部下の3つのCがあり、これらが相互にやりとりされる形になります。
①状況文脈をつかみ、その文脈に乗せて
よいコミュニケーションは自分の言いたいことを一方的に押し放つだけでは成立しません。文脈をつかむという受信作業、そして文脈に乗せるという発信作業があってこそ効果的に成立します。ここで言う文脈とは、上司/部下間に漂う空気とかそれまでのやりとりの過程、両者の関係性、担当事業の進捗する具合、組織風土、社会情勢など、当事者を取り巻く諸状況を指します。
図2を見てわかるとおり、部課長と部下が同じ状況におかれていたとしても、部課長には部課長の文脈があり、部下には部下の文脈があり、双方の文脈はまったく同じではありません。なぜなら両者には問題意識の差や情報感度の差などがあり、部課長側が感じ取る文脈と、部下側が感じ取る文脈にはズレが出て、それぞれのものになるからです。
部下とのコミュニケーションに優れた上司は、部下が感じ取っている文脈がどんなものであるのかまでをも含んで文脈を読み取りやりとりをします。いずれにしても、部課長として部下に「何を・どう語る」のかは、こうした文脈の上にしっかり乗っていなくてはなりません。
②語るべき内容を持ち
コミュニケーションの核となるのは、何と言っても「語るべき内容・伝えるべき中身」です。部下を動かしたり、部課長が信頼されたりするのは、最終的にはその部課長から「何が語られたか」なのです。
ビジネス現場にはあらかじめの正解値がない問いばかりです。そんな中で、対話力のある部課長とは、どんどん自分の考えることを部下にぶつけます。そして、部下はそれに刺激を受け、自分なりに考えることを始めます。部課長の「語るべき内容」の量と質に応じて、部下は何らかの反応を示すものです。そして部下からの反応と、部課長の考えとを戦わせながら、第三の答えを未知の中につくりだしていく、これがよい対話がなされている姿です。
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【部課長の対話力】
2010.08.23
2010.08.17
2010.08.10
2010.08.04
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。