「走りの車」は販売不振時の戦略転換か

2007.10.05

営業・マーケティング

「走りの車」は販売不振時の戦略転換か

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

昨日の記事“自動車販売不振は「買わない自由」の顕れか”の続き。 ここしばらくの自動車各社から発売された話題のモデルを見ると、国内販売不振に伴う戦略転換が見て取れるように思う。 日産のGT-R、スカイラインクーペ、三菱のランサーエボリューション・・・。

昨日記したように、国内の自動車販売は小型化・低価格路線をひた走っている。それに伴う低燃費傾向はエコロジーの観点から万々歳だが、もはや生活者の多くが自動車に対する関心を失っているため、販売縮小傾向に歯止めがかからない現状だ。

「一家に一台マイカーを」の時代。メーカー各社はいかに市場のパイを我がものにせんかという戦いを繰り広げた。まず、シェアをおさえる。そんな時の戦略の基本はプライシングにも反映される。
「ペネトレーション・プライシング」という。
自動車産業は典型的な「規模の経済」。生産数を上げれば効率も向上する「経験曲線」も効いてくる。逆に言えば、その生産能力を常にフル稼働させることが求められるのだ。
そうして、低価格でシェアを取るのが「ペネトレーション・プライシング」の基本だ。

しかし、昨日述べたとおり、自動車の成長神話は国内ではもはや崩壊の時を迎えた。
これからは「ペネトレーション・プライシング」が」効くのは地球の裏側。
BRIC’S市場に投入する70万円カー。

では、国内はといえば、伸びているのは輸入車やレクサスなどの“プレミアムカー”といわれるカテゴリーだ。
その名の通りプレミアム分として価格は高額だ。誰も彼もが買えるものではないので、プレミアムカー同士の戦いはあるものの、市場のシェアよりも高利益優先となる。
「スキミング・プライシング」という。その名の通り市場の「上澄み」を吸収しようという戦略だ。

しかし、プレミアム市場に乗れる日本車メーカーはトヨタが掲げるレクサスぐらいなのが現状だ。
となると、狙うのはこの車にこだわりをなくした市場に残された「車好き」となるのだろう。
GT-R、スカイラインクーペ、ランサーエボリューション。いわずと知れた「走り」の車だ。
その走りに徹した車を、価格が多少高くても受入れるマニア層に売る「スキミング戦略」。
ここの秋、自動車会社の戦略をそう読み取ったがいかがだろうか。

追記:レクサスも「走りの車」を発表した。”走りのレクサス「IS F」登場・5リッターV8+2ペダルMT”
http://www.nikkei.co.jp/bb/index.html

【関連記事】
自動車販売不振は「買わない自由」の顕れか

http://www.insightnow.jp/article/558

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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