7月の上旬に政府の物品調達において「競り下げ(逆オークション)」という新方式を採用し、調達コストを抑制する、という閣議決定があり、日経新聞でも取り上げられていました。また7/22日の日経新聞の経済教室欄でも「競り下げ」方式に関する寄稿がありました。このように政府調達に「競り下げ」をというのがマイブームになっています。
7月の上旬に政府の物品調達において「競り下げ(逆オークション)」という新方式を採用し、調達コストを抑制する、という閣議決定があり、日経新聞でも取り上げられていました。
また7/22日の日経新聞の経済教室欄でも東京大学の神取教授の「競り下げ」方式に関する寄稿がありました。
神取教授の指摘は「現状の政府調達における封印入札の方式と競り下げの方式では最終決定する落札額でむしろ現状の封印入札の方が低めとなる。これは理論+実証実験によって追認されている。競り下げ導入で現行よりコストが2割下がるというのは早計だろう。」という内容です。
これはおっしゃる通りです。また神取教授の寄稿の内容は分かりやすく解説してあり、頷かされる点も多々あります。
昨年の夏に私も「電子入札の活用」というメルマガの中でも同様のことを書きましたが、「オークション(競り下げ)を活用すればコストが削減できるというのは誤解」であり、「電子入札・オークション(競り下げ)の意味は交渉業務の自動化、標準化」です。
つまりそもそも調達コストを抑制するためにオークションを活用すること自体間違っているのです。
民間企業では、「競り下げ(逆オークション)」に対して、従来はフェースtoフェースの交渉を購買担当者(バイヤー)がやってました。つまり交渉⇔競り下げ(逆オークション)の対比で考えると競り下げは業務効率を爆発的に向上させることにつながるのです。またもう一つの競り下げの大きなメリットは契約業務の公平性・透明性を向上させることです。
繰返しになりますが、競り下げのメリットは交渉業務の自動化、標準化と契約業務の公平性・透明性の確保の2つなのです。(それも従来の相対の交渉と比較して)
神取教授は寄稿の中で封印入札と競り下げを比較しています。この比較では交渉業務の自動化、標準化のメリットはそもそも交渉しないのでメリットになりません。公平性・透明性の確保についても封印入札でどこまで情報開示を行うかにもよりますが大きなメリットがあるか、という点についても疑問視されます。
それでは政府調達におけるオークション(競り下げ)の活用は意味がないのでしょうか?
私はそうではないと思います。神取教授も「改革成功の鍵は、業者の自由な参入を確保することにある」と言及しています。業者の自由な参入の確保に関しては電子的な入札を行うことで、業者の参入負担を下げることにつながり、例えば地方の優良なサプライヤの採用にもつながるでしょう。また封印入札に対して競り下げの場合はより決定価格の透明性は高まります。
もっと大きなメリットはこのような様々な入札方式を用意することで、それぞれの案件に最も適切な契約先選定(ソーシング)方法を選べることです。これは、従来手間の問題から随意契約に流れていた案件を少なくとも入札方式に移行することにつながるでしょう。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。