あのシーンで、彼はなぜ、あんなに見事な笑顔ができたのか。 ユーモアと笑顔はスキルであることは間違いない・・・。
最近、クレーム対応術に注目が集まっている。
確かにクレーム対応には慎重を期さねばならないが、クレームになる前に切り抜けることもまた大切だろう。
そんなことを考えているうちに、夏季休暇・ハワイからの帰路での出来事を思い出した。
航空会社はノースウェストを利用した。
筆者の座席側を担当するパーサーは白髪の黒人。ちょっと厳つい顔。
ビールが飲みたくなって、彼に欲しいと告げた。
1缶、日本円なら500円。ドルなら5ドル。
為替レートから考えれば、どう考えても円の方が特だ。
円で払いたいという。
往き道では500円玉があったので問題なかったが、千円札しかなかった。
釣り銭はないと言われる。なので、ドルで払ってくれと。
だが、セコイ話だが、ドルだと損になるので嫌だと筆者は言った。釣り銭を持ってきてくれと。
今にして思えば、実に嫌な客だ。
彼は言った。残念だが、機内にはあいにく500円玉がない。
ほかの乗客が払ってくれていればよかったが、今はないと。
一瞬、膠着。
が、次の瞬間、彼はその厳つい顔を思いきり「ニカッ」とさせて、こう言った。
「いい考えがある。ここにビールが2缶ある。これをあなたに差し上げよう。代りに私はあなたからその千円札を頂く。
あたたはビールを2缶も飲めて、自分は釣り銭で悩むことから解放される。こんないいことはないだろう?」
よく聞けば全く当たり前なそのセリフを、実に面白おかしく話す。
このとっさの機転とユーモア。
下手な言い方をすれば、日本なら「何をいらないものまで売りつけるんだ!」とそれこそクレームになるかもしれない。
ユーモアはスキルなのだ。
米国人のジョークが面白いかどうかは別として、彼らはユーモアとウィットを尊ぶ。
それはそうだ。人種も違えば、生まれた国が違う人も多い。
下手をすれば言葉だってやっとやっと通じるくらいの人々も同じ国で生活しているのだ。
グダグダと話すよりも、時には機転を利かせ、笑って済ませられるようなスキルがなければやっていられないだろう。
日本流の誠心誠意のクレーム対応を否定するつもりは全くない。
筆者自身もその要務についていた時期も長い。
また、誠心誠意の反対がユーモアではない。
だが、全く別の軸の上に「ユーモアのスキル」というものがもっと育ってもいいのではないだろうか。
生活者も、それを受入れるようになってもいいのではないだろうか。
「ダイバシティー・マネジメント」という言葉も注目されている。
本来の意味は「女性の管理職登用」だけの問題ではない。
「多様性にいかに対応していくか」である。
多様性への対応であれば、米国は先進国だろう。
そこから学ぶものも多いはずだ。
さしずめ、ユーモアはその最初の方ではないだろうか。
笑って済ませられることは、できるだけそうした方がいい。
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2007.10.09
2007.10.10
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。