掃除ロボットの「ルンバ」が売れている。そして、さらに売れ行きは加速度を増していく気配がする。そのワケは・・・
日経MJ6月30日の家電&eビジネス欄に<掃除ロボ「ルンバ」 日本での販売まだ伸びる>との記事が掲載された。メーカーである家庭用ロボット開発のアイロボット社CEOのインタビュー記事である。世界中で激売れしているアップルのiPadを掲げるスティーブ・ジョブズの記事となりというのが、また何とも暗示的だ。
インタビュー記事によると、「売れる理由」は、同社がモデルチェンジ毎に改良を重ねているほか、その改良点が日本からの意見を取り入れたものであることも指摘している。その「お客様の声」の収集は、同社の日本における総代理店で宣伝から顧客サポートまでも担当しているセールス・オンデマンド社の功績が大きいようだ。海外製のハイテク製品は故障対応や修理などの不安がつきまとう。その窓口を一元的に運営し、フィードバック情報をアイロボット社に提供して、より日本市場に適合した製品に仕上げているのだ。
インタビュー記事では日本市場での拡大の理由の一つをCEOは<「ほかの国ではロボットに抵抗を示す消費者も多いが、日本はアニメなどで慣れ親しんでいるためか、ロボットが生活に入り込むことを受入れている」>と指摘している。しかし、それでは一部のメカオタク層のおもちゃで終わってしまう。例えば、ソニーの犬型愛玩ロボット「AIBO(アイボ)」。AIBOは1999年6月1日、価格250,000円のERS-110型が発売され、あっという間に完売した。購入者の多くは画期的な動作をするロボットとしての魅力に惹かれたメカマニアであったという。
ルンバは誰が、どんな理由で買っているのだろうか。そして、現在本当に売れているのだろうか。セールス・オンデマンド社に聞いてみた。
「“ロボット”という言い方を封印したところからヒットが加速し始めたんですよ」と同社の役員は意外な話を明かしてくれた。
「掃除をしてくれるロボット」という今まで見たことも聞いたこともない概念を、人はにわかには受入れられない。また、ロボットは日本人にとって古くは「鉄腕アトム」であり、「ドラえもん」であり、「ガンダム」だ。まだ、世に出ていないもの。空想の産物。そして、それらが形になっているとしたら、それは「おもちゃ」だ。確かに上記「アイボ」はおもちゃだ。実用化されている二足歩行ロボットのホンダ「アシモ」もあるが、とても一般家庭に導入できる価格ではない。
故に、一般家庭では「使える道具」というポジショニングにリセットする必要があった。ルンバは洗濯機や食器洗い機などの「家電の仲間」なのだと。掃除機も食洗機も全自動。掃除も全自動でやってくれる家電があってもいいじゃないか。そんなアプローチだ。
「おもちゃ」ではなく、「使える家電」であるという認識さえ形成できれば、結果としてそれがロボットの機能を搭載して家の中を動き回っても、日本人的には嫌悪するような感情を持つものではない。それが、アイロボット社CEOの解説の真意のようだ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。