どうした自動車ジャーナリスト! 
事実を語らない裏事情

2010.07.05

経営・マネジメント

どうした自動車ジャーナリスト! 事実を語らない裏事情

ITmedia ビジネスオンライン
“ニュースを考える、ビジネスモデルを知る” ITmedia 編集部

どの世界にも事実を伝えようとしない、いわゆる“御用ジャーナリスト”が存在する。中でもクルマ業界のそれが、目立ってきているのではないだろうか。本当のネタを語ろうとしない自動車ジャーナリストの裏事情に迫った。 [相場英雄,Business Media 誠]

 「意に沿わない原稿を出せば、試乗会やイベントに参加できなくなり、即座に廃業のリスクが高まる」(ベテランのライター)ほか、「Webサイトの主要な収入である広告がゼロになってしまう」(編集担当者)ためだ。

 実際、メーカー関係者からは「手厳しいことを書かれぬよう、ベテランを中心に定期的に接待を繰り返している」(某大手広報幹部)との声が漏れてくる。

 主要紙やテレビでは、新車や注目モデルの詳報を得ることは難しい。よって、筆者のようなクルマ好きは自動車専門誌を購入し、あるいは専門Webサイトで情報を得ている。自動車は数万点にも上るパーツの集合体であり、定期的に人事異動を繰り返す大手紙やテレビの記者がフォローできない専門情報が多いため、自動車評論家、あるいはジャーナリストの分析・解説記事が、クルマ好きには必要不可欠なのだ。

 「メーカーと専門記者が絶対に接待の場で会ってはならない」などと青臭いことを主張するつもりは一切ない。ただ、広告確保やつなぎ止めのため、メディア側が過剰な配慮をしたり、果ては安全性に関わるような問題までメーカーの説明をうのみにしてしまうのでは、専門記者の存在意義などなくなってしまう。

 実際、今年に入ってから自動車専門誌の休刊が相次いでいるのは、多くの読者がこうしたメディア側の「腰砕け」傾向を敏感に感じとってしまったからではないのだろうか。

 先のアウトバーンの事例だけでなく、エコカー減税をめぐる不透明な車重区分の存在、実燃費とメーカー公表燃費の大きな差など、日本の自動車業界全体をめぐる諸問題はほとんど報じられていない。

 現状、こうしたネタを制約なく書いている人は、日本に数人しかいない。自動車専門ジャーナリストの奮起を期待したい。


相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。
2006年末に同社退社、執筆活動に。
著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『偽装通貨』(東京書籍)、『誤認 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。
ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo

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