スーパーのPB(プライベートブランド)商品、ユニクロ、そしてカルティエ・フェラガモ・ディオールなどの高級ブランド商品。一見何の関係もないようなこれらの商品から、消費者の新たな価値観を探ってみたい。
<「カルティエ」は日本での売上高が2ケタ増となり、「フェラガモ」や「ディオール」も好調>と報じられている。また、<百貨店でも高級ブランドに回復の兆し>という。一方で、<「ルイ・ヴィトン」や伊「フェンディ」などを展開するモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン・ジャパン(LVMH)の場合、2010年1~3月の国内売上高が前年同期比7%減>と回復はまだら模様である。
その差はどこから来ているのか。
<若者の取り込みに成功したブランドは回復し、そうでないブランドは厳しい><「若者が重視するのはブランド名よりもデザインです。若者好みのキラキラした素材を使い、若者が『かわいい』と思うブランドは売れているし、逆に『かわいい』という言葉が出てこないブランドはダメだと思います」>と 電通総研消費者研究センターの四元正弘・消費の未来研究部長が解説している。
従来、ブランド品の価値は、「そのブランドであること」だった。少なくともバブル経済華やかなりし頃を最盛期として、ごく最近までその傾向が大きく変わることはなかったはずだ。それが、『「ブランド名」ではなく、「デザイン」であり、“自分が”「かわいい」と思うことが価値』となっているのだ。これは大きな価値観の変化だといえるだろう。
■ターゲットの価値観にミートさせる!
消費者が「自分の価値観」を重要視する。それはブランド品などの高関与度商品だけの話ではないだろう。「購買」という行為全般に対する意識変化だと考えた方がいい。
インターネットの普及による「情報の非対称性」、つまり「売り手と買い手の情報格差」がなくなって、我々は「賢い消費者」になった。闇雲にモノを買う、売り手のいいなりに買うというようなことをしないよう、「賢い消費」を心がけるようになった。それは価値観の変化だ。
デフレ不況、世界的な経済危機を経験し、今度は我々は「自らの価値観に合った購買」を心がけるという、価値観の変化が起きているのだろう。
そこで重要なのが「自らの」というところだ。
顧客がどのような人で、どのような価値観を持っているのか。つまり、「ターゲットを明確にして、そのニーズに愚直に応える」ことが求められているのだ。
ユニクロやスーパーなどのように幅広い顧客を持った企業に、ターゲットを明確にするのは難しいという論もあるかもしれない。しかし、オンワードや、レナウンなどのメーカー、またはZARAやフォエバー21のような海外ファストファッションではなく、ユニクロを選ぶ。例えば、ザ・プライスのようなディスカウントスーパーでも、成城石井のような高級スーパーでもなく、西友に来る。その品揃えの中でPBを利用する。それらは、立派にターゲットセグメント化されている顧客である。その来店客の姿にどのような顧客像を見出すか。どのようなニーズを汲み取るかが求められるのである。
景気の変動ととともに、消費環境は大きく変化している。それに伴い、消費者の意識も変化する。景気が本当に好転するかは定かではないが、一足先に消費者の価値観の変化が現れているのは確かなようだ。
激動する環境下で生き残れる者は、最も良く変化に対応できる者であるという。この変化の兆しを見逃すことなく、自らを進化させていくことが企業に求められているのである。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。