スーパーのPB(プライベートブランド)商品、ユニクロ、そしてカルティエ・フェラガモ・ディオールなどの高級ブランド商品。一見何の関係もないようなこれらの商品から、消費者の新たな価値観を探ってみたい。
■熾烈さを増すバリューラインをめぐる戦い
通常、価格の高いものは価値も高い。価格が安いものは価値も低い。価格と価値が正比例する関係を「バリューライン」よぶ。
価格に対して価値が低いものは当然消費者の支持を得ることはできず、売れない。そのため、バリューライン上に「低級品」「中級品」「高級品」というような価格帯が並んで相場が形成される。しかし、価格競争を制するためにはバリューラインを上回るポジションを取る必要がある。スーパーのPBが支持されたのは、「低価格だが、中級品(普及品)と同等の価値」であるからだ。ユニクロも、低価格にもかかわらず、「品質だけならもはや対抗できない」と大手アパレル幹部が漏らすように、大きくバリューラインを超えたポジションを取っていることが好調の原動力となっているのである。
しかし、消費者の要望は一層厳しくなっている。日経MJは、景況感が好転しつつあるため、値下げ圧力が弱回ってきたという論調だが、だからといって、値段を上げれば売れなくなる。あくまで「据え置き」で、「質の向上」が求められているのである。つまり、バリューラインの標準ラインが引き上げられたことを意味しているのである。もはや今まで通りでは、バリューラインの水面下に沈んで消費者の支持が得られなくなる。売れなくなるのである。
ユニクロは既に手を打っている。2009年、デザイナーのジル・サンダーとの契約によって、ユニクロの新ブランド「+J」を秋に発売。他商品も同氏の監修によってデザイン性を高めている。つまり、従来の「品質」「機能」に「ファッション性」という価値を加えたのである。
同様に、小売り各社はその消費者の要望に対応するため、PB品でも「価値向上」を図ろうとしているのだ。
■「高級ブランド」復活に見る「価値」の基準
「価値向上」が生き残りの必須条件であるのが時代の流れだが、「価値」とは漠然とした基準であることは確かだ。人によって「価値」のとらえ方が異なる。何を、どこまで実現するべきか、迷う。
一つ、面白い現象が報じられている。「高級ブランド」の復活である。それは、単なる「景況感の回復」によるものではなく、よく見れば消費者の意識変化を表しているといえる。
<高級ブランドに回復の兆し 「カルティエ」2ケタ増、「ディオール」も>(6月27日・J-CASTニュース)
http://www.j-cast.com/2010/06/27069347.html
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。