日経MJの「2010年上期ヒット商品番付」が発表された。大型ヒット商品の不作で東の横綱不在という寂しい結果の番付表。その東前頭3枚目に「デパクロ」が列せられた。「デパート+ユニクロ」を意味し、<フォーエバー21なども含め低価格衣料品店が百貨店に相次ぎ進出し集客>※1とある。その百貨店はどこへ行こうとしているのだろうか。
■自助努力による相乗効果創出
もう1つの顧客から収益を上げる方法が「クロスセリング」である。これは、「関連商品の販売」によって売上げ・利益を増すのだ。前述のフォーエバー21などのファストファッションの来店客が食品売り場に流れて売上げが上がるということも、百貨店全体としてはクロスセリングが達成できているわけだが、どこまでそれを狙ってやったのかは疑問だ。本来的には、衣料・雑貨売り場での回遊によるクロスセリングを図るべきであり、衣料品売り場をパスして食品売り場に流れることが続くなら、ファストとのカニバリ(食い合い)が顕在化する懸念も考えられる。
その意味では、衣料・雑貨売り場での新たな回遊ルートを構築する動きが、松坂屋と同じJ・フロントリテイリング傘下の大丸で始まっている。
その一つが、大丸心斎橋店と京都店で展開されている「うふふガールズ」だ。従来顧客でない若年女性向けの複合ブランドによる売り場展開が、従来にない商品構成と売り方でターゲット年齢にとどまらない幅広い女性層の支持を集めて活況を呈しているという。
もう一つが小規模インディーズ系デザイナーズブランドを扱うセレクトショップの誘致だ。※4上記「うふふ」と同じ大丸心斎橋店の<北館に2月、古着風や民族衣装風など個性的な品揃えで異彩を放つ店が開業した。近年のインディーズを扱うセレクトショップの出世頭、ステュディオス(東京・渋谷)の心斎橋店だ>という。その取り組みは<メジャーブランドだけではいつ飽きられるかわからない>(MDマネージャー)という若年層対策の問題意識からである。
百貨店自らが売り場を作る。さらにはメジャーなブランドに場所貸しをするだけでなく、成長させる。そうした「売り場の魅力作り」という基本ともいう取り組みによって、従来にない顧客を取り込み、ファン化して売り場内の買い回りを促進して「クロスセリング」を達成させることが欠かせないのである。
■顧客の囲い込みはどうか?
もう1つ、顧客から収益を上げる方法がある。いわゆる「顧客の囲い込み」を中心とした、「アフターマーケティング」である。顧客との関係性を構築して、商品を購入した後のサービスの提供などによって、収益を上げるのである。
<三越日本橋本店(東京・中央)にサービス関連の専門コーナーが誕生した。「暮らしのサロン」という名称で、衣料品の寸法直し、クリーニング、家事の支援、金融相談の4店を1カ所に集めた。買い物ついでに立ち寄れる利便性が受け、売上高は計画を大きく上回っている>※5という。しかし、<価格は決して安くはない。クリーニングのスーツは6300円、ジャケットは4275円から。食事の宅配1セット(朝・夕食)2940円>だ。利用顧客は、同店の主要顧客層である中高年であり、<物を大切にする傾向が追い風>と見ている。そして、<商品を売るだけではなく、生活全般に関わる>との狙いであるという。
決して安くはないサービスを利用してくれる大切な顧客に対し、モノを売るのではなく、コトとしてのサービス提供によって、より強固な囲い込みを図りつつ「アフターマーケティング」による収益を上げる。
ホスピタリティーは百貨店本来の得意技であるはずだ。重要顧客ベースを堅持し、収益を上げる方法として、「物売りの呪縛」を解き放って、サービスに目を向けた取り組みの比重を上げるのは非常に重要なことであると考えられる。
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2009.02.10
2015.01.26
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。