消費の新しいカタチ「コト・コト交換」という動きを考えてみる

2010.06.02

営業・マーケティング

消費の新しいカタチ「コト・コト交換」という動きを考えてみる

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 1990年代から若者やファミリー層を中心に広がった「フリーマーケット」。最近では、フリマと略されることが多い。略されるのはそれだけ人々の口に上る機会が多いからだ。すっかり世の中に定着した。さらにその進化形ともいえるべき動きから見えてきたものを考えてみよう。

 さらに、「コト」が重要視される取引が人気を集めている。「xChange(エクスチェンジ)」という。
 古着やアクセサリーなど、自分が使わなくなったモノ持ち寄って、自分の気に入ったモノを持ち帰るという「物々交換」のようなイベントなのだ。但し、単なる不要品交換会と異なるのは、持ち寄った品物一点一点に付ける「エピソード・タグ」の存在だ。その品物に込められた思い出、取扱注意方法、次に着てくれる人へのメッセージ等をタグに書き込む。<エピソード・タグを読みながら物色するのも、xChangeの楽しみの一つです。>と主催者は語る。
 つまり、主催者は<古くて新しい「物々交換」>としているが、実体は「品物にまつわる“コトとコト”の交換」。つまり、「コト・コト交換」であるといえるだろう。
※xChange  → http://letsxchange.jp/
※xChange体験記:いらないモノを持ち寄って交換する「xChange」にチャレンジしてみた!(Web R25) 
http://tinyurl.com/3aaygez

モノがあふれた市場の飽和状態にあるといわれて久しい。1987年に登場し、1990年の流行語大賞にも名を連ねた「バブル景気」が1991年2月に崩壊し、以後の失われた10年の中で「モノからコトへ」が新たな消費のキーワードであるとして、各企業が様々な取り組みや商品開発の試行してきた。しかし、考えてみれば、それらの多くは「モノ」を「コト」に単に置き換えただけの消費喚起でしかなかったのではないだろうか。
 「Pass The Baton」は商品にまつわる持ち主のプロフィールやストーリーと価値観が、付随価値を超えて商品の中核価値と同等以上に重要視され取引されている。「xChange」では、さらに商品にまつわるエピソードが、通貨を媒介としない「価値」そのものとして交換されている。
 「消費者の意識の変化」というキーワードも耳に慣れてしまっているが、より鮮明化した「モノ以上のコトの価値」と「コト・コト交換」は従来と本質的に異なった動きであるといえよう。しかし、画一的な価値観で図れないため、企業としては取り込みにくい動きであるともいえる。しばらくは静観するしかないかもしれないが、目を離すことができないのは間違いないだろう。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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