牛丼、居酒屋に代表されるように、「チキンレース」ともいうべき果てしなき値下げ合戦が各種業界で展開されている。また、マネタイズ(収益化)のメドすら怪しいような無料サービスも散見される。そんな環境下で、「無料サービスを有料化」して好評を得ている全日空空輸(ANA)の例を考えてみたい。
記事では「出張客や家族客に支持されている」とある。家族客は多くは旅行目的だろう。せっかくの「ハレの日」には、特別な体験をしたい。無料提供がなくなったのは仕方がないとするなら、同じものを有償で手に入れるより、いいものが欲しいと思うのではないか。
出張客には、やたらと出張慣れしている人と、たまの出張の人がいる。慣れている人は、従来でも提供されるまで待つ無料飲料に期待せずに、PETボトルを持ち込んでマイペースに飲む人も少なくなかった。なぜなら、出張で機内で過ごすのはごく当たり前の日常、「ケの日」であるからだ。たまの出張の人にとっては、家族客と同じく機内体験は「ハレの日」だ。同じ理由で高級有償サービスがうれしい。
担当者は「コンビニと差別化するために価値ある商品を選んだ」(同記事)と語っている。自分で持ち込む以上の「価値」をしっかりと提供していることが大きなポイントであり、顧客満足につながっているのである。
「機内」という特殊な空間とシチュエーションにおいてではあるが、従来の常識をもう一度見直し、顧客の立場で「価値」を自らに問い直して、「有償高級化」という昨今の世の流れに逆行して成功したANAの展開からは学ぶべきところが大きいといえるだろう。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。