2010年5月25日、コカ・コーラがシェア№1を誇る日本のコーラ市場に、野心的な戦略を秘めた2つの商品が店頭に並んだ。Web上でも事前のニュースリリースで大きな話題を呼んでいたアサヒ飲料の「グリーンコーラ」と、毎年恒例の変わり種ペプシ「ペプシ・バオバブ」である。
もう一方のグリーンコーラ。
競合製品は4月26日に発売された、金色ラベルのコカ・コーラ、「コカ・コーラ ゼロフリー」だ。製品の基本特性としては、「保存料ゼロ、合成香料ゼロ、カフェインもゼロ」という点は全く同じ。しかし、圧倒的なリーダーに「同質化」を仕掛けるのは全く持って無謀だ。アサヒはそこに別の特性を加えている。広告コピーに「果実とモルトの素材派コーラ」とある。グリーンコーラのグリーンという名前の由来は、自然成分にあるという。同社のニュースリリースでは「アサヒビールの黒ビール製造の技術を活用し、黒麦芽を使用することで、コーラ飲料の特徴である力強い味わいを実現しました」ともある。氷室京介が「コーラが素材にこだわって何が悪い?」と挑戦的に語りかける言葉こそが、アサヒ飲料の切り札というわけだ。
だがしかし、実際には筆者はそれほどの味の特異性も「力強さ」も感じなかった。むしろ、前述の通り「さわやか」だ。もしかすると、コカ・コーラ ゼロフリーは「オトナが夜のリラックスしたひとときを楽しむための飲み物」というポジショニングを打ち出している。その逆張りで、グリーンコーラは「大人が昼間のふとした休息時に飲みたくなるさわやかなコーラ」として飲ませたいのかもしれない。事実、よく晴れた日の昼下がりに飲んでみたい味なのだ。「大人のための、日中のリフレッシュ飲料」というポジショニングで勝負する意図なのだろう。
変わり種ペプシ「バオバブ」は、ファンの予想さえもさらっと裏切った驚きの味わいで、チャレンジャーのブランド戦略を見せてくれている。
もう一方の「グリーンコーラ」は、同じターゲティングをしているリーダーのポジショニングの隙を突いて、全力で展開している。どちらも、強大なリーダーに挑む戦略の事例として極めて興味深い。さわやかな味わいを楽しみながら、その動向をしばらく見守ってみたい。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。