「節約疲れ」な消費者の財布を、どうしたらつかめるのか?

2010.05.13

営業・マーケティング

「節約疲れ」な消費者の財布を、どうしたらつかめるのか?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 「節約疲れ」。そんなキーワードが各メディアで目につくようになってきた。節約志向が高まっていた消費者が、あまりに長引く不景気で、ついに我慢に疲れて今年に入ってから消費を始めたという説だ。デフレ不況下の勝ち組とされるユニクロの3月の売上高が7年ぶりの大幅なマイナスに転落したのもその影響であるともいわれている。

 もう一つ注目したいのが、牛丼業界の「ニッチャー」である「神戸らんぷ亭」だ。
 同社は業界内でも珍しい、醤油だれベースではない「塩だれ牛丼」を展開するなどの独自性が光っている。そして、変わり種味として「味噌味」も店舗限定で展開し始めた。
 
  <神戸らんぷ亭が「戦国牛丼・信長」を2店舗で販売>(ナリナリドットコム3月30日)
 http://www.narinari.com/Nd/20100313318.html
 <織田信長が好み、当時は贅沢品として重宝された味噌を使用>とのことだ。並盛り500円。
 さらに新メニューも全店で展開する。
 <5/10より『ねぎとろ丼』を発売開始しました!!>(PRタイムズ5月11日)
 http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000037.000000721.html
 こちらも同じく並盛り500円。
 そう。両メニューの価格に注目である。牛丼業界は300円を切るか切らないかという、熾烈な低価格戦争を展開中だ。その中で500円、ワンコインは「ちょっとした贅沢」を狙った展開ではないかと考えられる。

 昨今のランチは300円~500円に抑えたいとする人が非常に多い。500円ならいざ知らず、本当に300円に抑えるのは、実は結構厳しい。280円のすき家の牛丼か、コンビニでおにぎり+カップ麺という、カラダとココロに少々よろしくない昼食が続くこととなる。
 そのランチ予算の上限500円を「知覚価値価格設定」でキッチリ狙っているのだと考えられる。

 一方に振れた振り子は、必ず反対側に振れる。健康志向、メタボ抑制の動きの反動で、「メガフード」はすっかり市民権を得た。消費者が「節約疲れ」しているかは定かではないが、消費を抑制していることは間違いない。その振り子が反対に振れるときが来たのかもしれない。しかし、まだ景気は本格的には回復していない。反対側への振れ幅は小さいだろう。
 その、小さな振れ幅をどう取り込むのか。各社の知恵の使い方が試されている。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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