2010.05.12
「漫画★全巻ドットコム」と「ビジネス書全巻ドットコム」
山本 亮二郎
株式会社TORICOが運営する「漫画★全巻ドットコム」は、漫画を全巻セットでのみ販売するというビジネスモデルで、漫画の主要タイトルにおいては、大型書店や大手書籍販売サイトを凌ぐ売上になっている。PE&HR株式会社はTORICOと共同で、「全巻セット販売」というマーケティング手法を応用して、「ビジネス書全巻ドットコム」をオープンした。
「漫画★全巻ドットコム」というWebサイトをご存知だろうか。YouTube、ユニクロ、楽天トラベル、アメーバブログと並んで特集されるなど、テレビや雑誌で紹介されることも多い。このWebサイトを運営しているのが、株式会社TORICOである。社名には、「世界を虜(とりこ)に」という想いが込められている。
社長の安藤さんがまだ会社に勤めていた頃に、当社が企画した起業支援プログラム「起業家魂」への応募があった。その後、事業計画について打ち合わせを重ね、会社が設立された直後に初回投資を行った。当社自体も設立から日が浅く、大手銀行グループや地域金融機関から出資を受けて、最初のインキュベーションファンドを設立した頃だった。
TORICOは設立当初、スニーカーの企画・製造・販売を行っていた。センスの良いスニーカーを何種類か販売したが、売上は思うように伸びなかった。そんな中で必死に考えて生まれた新規事業が「漫画★全巻ドットコム」である。
当時の安藤さんの役員報酬は月額8万円。家族の支えがあったから生活できたのだと思うが、創業期はそのような状態が続いた。設立したばかりの会社や大赤字の会社で、月額100万円近い報酬を取る起業家を時々見かけるが、そんな段階で自ら高額な報酬を取るようでは事業の立ち上げは難しい。私たちは、無名の若者によるベンチャーの創業に数多く立ち会ってきた経験から、いくつかの「成功の法則」を明言できる。8万円は極端だとしても、創業期の起業家の報酬はそのひとつだ。
「漫画★全巻ドットコム」は、漫画を全巻セットでのみ販売するというビジネスモデルである。たとえば、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』全169巻(税込69,380円)をインターネット上で購入するためには、169回もクリックしなければならない。書店で購入するとしても、地方書店ではなかなか全巻は揃っていないだろう。また、読破するには推定74時間23分(TORICO調べ)もかかるため、インターネットカフェではさすがに疲れてしまうし、結構なコストもかかる。家でゆっくり読みたい時もあるだろう。これらのニーズを満たすことで、「漫画★全巻ドットコム」は大ブレイクした。漫画の主要タイトルにおいては、大型書店や大手書籍販売サイトを凌ぐ売上になっている。
「全巻セット販売」というマーケティング手法は、何も漫画だけに限ったものではなく、様々な商材やジャンルに応用が利くはずである。そのような仮説をもとに、TORICOと当社は共同で、「ビジネス書全巻ドットコム」をオープンした。ビジネスに特化した多彩な切り口の全巻セット書籍が購入できるのはもちろん、ベストセラー作家や著名経営者のインタビューも掲載し、その方々の思想形成の軌跡を関連書籍とともに辿れる仕掛けにもなっている。
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