「ニッチ戦略」で生き残りをかけるエン・ジャパン

2010.05.11

営業・マーケティング

「ニッチ戦略」で生き残りをかけるエン・ジャパン

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 ある業界でシェアナンバー1を誇る「リーダー」ではない。さりとて、リーダーに挑戦する「チャレンジャー」となる力もない。現実的にはそんな企業は数多い。残された道はリーダーの落ち穂拾いをする「フォロアー」に甘んじるか、「独自の生存領域」を確保して「ニッチャー」の地位を確立するかだ。就職サイトの「エン・ジャパン」はニッチャーとなる大きな賭に出た。

 ニッチャーを目指すエン・ジャパンの成功のカギは、サイト利用者である学生にどこまで魅力を提供するかである。つまり、冒頭の「バリュープロポジション(Value Proposition)」である。
 昨今の学生の大手・知名度志向は根強い。まず、そうした学生に対して、中堅・中小・ベンチャー企業で働くということの魅力をきちんと伝えることだろう。
 余談だが、筆者は大学で「ベンチャービジネスとマーケティング」という講義を担当するようになって5年になる。この講義、実は景気の変動の影響が大きく、比較的好景気で就職が売り手市場傾向の時には履修者が少なく、不景気で就職難になると多くなる。今年は久々に100人近い履修登録者数となった。その意味からすると、同社には明らかにフォローの風が吹いている。いかにうまく、説明・説得ができるかだろう。

 同社の一番の秘策は、独自の評価基準を設けたことにあるようだ。<企業を5つの力(「人材育成力」、「独自力」、「収益力」、「社会貢献力」、「正直力」)の観点から、最大三ツ星で表示し、企業の強みを可視化します>(ニュースリリース)とある。学生にとってなじみのない会社ばかりが並ぶサイトになるのは間違いない。そこで、どれだけこの評価システムが効果を発揮することができるかがキモなのだ。そこで信用を獲得し、口コミ的に次の年の就活生へと伝わるようになれば、それが「バリュープロポジション」が確立したことになる。つまり、FMA(First Mover’s Advantage=先行者利益)が獲得でき、ニッチャー戦略が成功したことになる。
 サービス開始は10月とのことであるが、同社の検討に期待したい。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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