チーズ牛丼(並450円)、コーンマヨ牛丼(同430円)、辛みそネギたま牛丼。各種の具材がトッピングされた牛丼。しかし、それは「すき家」の話ではない。吉野家の新メニューだという。
もう一つ、記事中に気になる記載がある。中心的な話題の特大盛りについてである。
<牛丼の特大サイズは、実はゼンショーの「すき家」が先行していた。2007年10月から「メガ」サイズ(610円)を販売しているのだ。比較のため、都内のすき家へ>と、特大盛りの発表時に多くの人が「すき家のメガと何が違うんだ?」と思ったことを検証している。結果は<特大盛と量はだいたい同じだが、かなり汁だくなのが特徴>とある。
ご飯対肉の比率が違って、吉野家の方が「肉がたくさん」という印象を筆者は持ったが、記事にあるように、それほど大きな差異があるとも思わなかった。その割には価格差が120円と大きい。やはりこれも、話の種に一度食べにくる人を多少取り込めても、大きな新規客獲得要因にはなっていないと言わざるを得ない。
トッピングメニューにしても、特大盛りにしても、結局は通常の牛丼に具材をのせたり、肉の単純増量をしたりしているだけなので、商品的な差異は出しにくいのだ。そして、フォロアーに徹しようにも、材料の米国産牛肉へのこだわりから原価がどうしても高く、低廉な価格展開ができない。これでは、今までと全く構造が変わっていない。
チャレンジャーとしてリーダーへの返り咲きは困難で、フォロアーにもなれないとすれば、独自の生存領域を確保した「ニッチャー」になるしかない。その点は、筆者が「プレミアム牛丼でニッチャーとなるべし」と以前に指摘した。
(過去記事参照:緊急提言:「牛丼戦争は停戦を、吉野家はプレミアム化せよ!」 http://tinyurl.com/y6gtng4 )
ニッチャーの好例は、関東近辺で牛丼チェーンを展開している「神戸らんぷ亭」だ。同社はオリジナルメニューの「塩牛丼」を開発・販売している。すき家のトッピングも基本は醤油だれベースの通常の牛丼へ単純に具材を乗せたに過ぎない。塩牛丼はタレから全く別のものを用いている。
吉野家に塩牛丼を模倣しろといっているのではない。神戸らんぷ亭は、塩牛丼のために通常の牛丼と別鍋でオペレーションをしているのと同様、メガ牛丼とあまり差異のない、単純な肉増量ではない「プレミアム牛丼」を別鍋で用意するオペレーションの展開を示唆したいのである。
当然、オペレーション効率の低下は否めないだろう。しかし、規模を追わず、ニッチャーとしてポジションを確保する戦略を練り直す方が生き残りの可能性は高まるはずだ。
現状のような「単純トッピング」「単純増量」で価格優位性もない状態では、生き残りは難しいだろう。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。