コクヨS&Tから発売されている「針なしステープラー」が大ヒット中だという。そのワケをマーケティング的に考えてみると、まさに「売れるべくして売れた商品」であることがわかる。
<針なしで書類をとじるステープラーが大ヒット>(日経トレンディネット2010年4月1日)
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/hit/20100329/1031336/
記事によれば発売は2009年12月7日。以来、<当初の年間売り上げ目標1億円を発売からわずか2カ月で突破し、現在も順調に売り上げを伸ばしている>という。
ステープラーとは、いわゆるホチキスのこと。「ホチキス」という名前は既に失効した登録商標でJIS規格上の名称が「ステープラ」。そして、通常「ホチキスの針」といわれているものは「ステープラ用つづり針」というわけだ。これ、豆知識。
さて、「ホチキスと針」はマックス株式会社が最大のシェアを持っているが、それ以外のメーカでも概ね針を用いる同じようなメカニズムの製品を作っている。しかし、「針を使わないステープラー」というものがとりわけ斬新なアイディアで先進的な技術を使っているのかといえばそうではない。
実は筆者は文具オタクでもあるのだが、初めて「針を使わないステープラー」というものに出会ったのは四半世紀近くも前のことだった。雑誌で外国製のそれを知ってどうしても欲しくなり、探し回って手に入れた覚えがある。
では、コクヨの商品がどうして大ヒットをしたかといえば、文具オタクのココロを捕らえるのではなく、今日の環境に適合し、さらにオフィスワーカーが抱えるニーズギャップに実に見事に対応したからに他ならない。
筆者がかつて手に入れたステープラーと紙を綴じるメカニズム自体は大きく変わらない。紙に切れ込みを入れて、紙同士を絡めて綴じるのだ。筆者が持っていたのは1つ穴タイプで、いわゆるホチキスの代替だ。しかしその割には綴じられる紙は3~4枚までとちょっと非力すぎで実用的ではなかった。
コクヨの製品は2穴タイプで、何と、綴じ込みに使う切れ込みが、そのまま2穴ファイルの穴として利用できるのだ。つまり、ホチキスと2穴パンチを兼ねているという優れものなのである。このあたりのアイディア自体に既にうなるものがある。さらに、綴じ込み能力は業界最大(同社調べ)の10枚だという。
商品としてのスジが極めていいのはヒットの最低条件だが、大ヒットのワケはそれだけではない。同社のホームページの説明と動画を見るとすぐに理解できるだろう。
<針なしでとじる!?こうなっていた…秘密を動画で紹介!!>(接続後すぐに音が出ます)
http://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/sl-stapler/
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。