出版不況が深刻化している昨今。電子化の波に乗ろうと、各社が雑誌のデジタル配信に取り組んではいるが、成功しているところがあるとは言いがたい。雑誌が生き残るためにはどうすればいいのか? その条件を考えてみた。 [郷好文,Business Media 誠]
雑誌の楽しさとは“ドリーミング”なのである。好きなことの夢を見させてくれる。優れた編集者、ライター、写真家、挿絵家がタバになって「どうだ、まいったか」というのが雑誌の魅力である。電子雑誌はまだドリーミングまで到達できないと思う。
ダイレクトとナマで雑誌苦境を乗り切ろう
とはいえドリーミングだけでは救えないのが雑誌の苦境。忘我のクオリティを維持してもらうためのアドバイスは“ダイレクト”と“ナマ”である。
ダイレクトとは直販。日本の雑誌販売は8割が書店流通、2割が直販とされる。米国はこの逆で8割が定期購読、2割が店売りである。損益分岐点まで定期購読の直販比率を高め、「売れるだけ刷る」という姿を目指す。それには購読者データベースやニーズを探る仕掛け作りが必要。ニーズを知ってコマース強化を図ろう。限定品や掲載商品などの販売収入を増やし、広告一本足から脱出する。
コマースはナマが良い。定期購読者へのナマ特典として、ナマの参加体験、ナマツアー、ナマ写真、ナマ撮影会、ナマのおまけグッズなど読者と雑誌の作り手が交流し、夢をふくらませてもらう。撮り鉄もナマの被写体への大接近で身を震わせるのだ。
日経でさえ有料電子新聞の成功は怪しい。雑誌はコアな読者を絶えず広げ、育て、ともに歩むのが王道である。
著者プロフィール:郷 好文
マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年~2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「cotobike」
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